Flash+Augmented Reality=∞
最後に登壇したAdobe CTOのKevin Lynch氏は、Flashの持つ3D技術の応用例として、Augmented Reality(AR、拡張現実)を実現した2つの事例を紹介した。
近ごろiPhone向けの「セカイカメラ」などの登場で一気に関心を集めたARだが、これはコンピュータを媒介にして現実の環境とバーチャルな付加情報とを重ね合わせ、ユーザーに提示する技術を指して使われる言葉である。
Lynch氏がデモした1つ目の事例は、United States Postal Services(USPS)がPriority Mailサービスのサイト上で展開している「バーチャルボックスシミュレータ」だ。
これは、ユーザーが運んでもらいたい荷物に対して、どのサイズの「箱」が適切かをサイト上でシミュレートして見られるもの。同サイトからPDF形式でダウンロードできるマークをプリントアウトし、PCにつないだウェブカムに映すと、小包の箱が3Dで画面上に表示される。マークを回転させたり、傾けたりするとそれに合わせて画面上の箱も動くようになっている。送りたい荷物をどのサイズの箱で送るのが適切かをあらかじめ知るための実用アプリケーションということだが、実際に試してみると、現実の景色と3Dのオブジェクトが連動して動く体験自体が面白い。

そして、この技術を利用したもう1つの例として紹介されたのは、エンターテインメントとARとの融合だ。Lynch氏が「壊れたハートマーク」がプリントされた紙をウェブカムに掲げると、画面上の彼の手のひらに小さな部屋と人物が表れて動き出す。その人物が歌い出すと、同時に音楽が流れ始める。Lynch氏がマークを載せた手のひらを動かすと、それに合わせて部屋と人物も位置を変えていく……。

Lynch氏の手の上で動くビジュアルとシンクロする音楽は、米国の人気シンガーソングライターであるJohn Mayer氏のミュージッククリップだ。Adobeは代理店と共同で、Mayer氏が近日発売する新曲の3DミュージッククリップをFlashによるAR技術で実現したという。AR技術をバズマーケティングに活用しようという取り組みだ。Lynch氏に招かれてステージに上がったMayer氏は、「自分にとって一番のテクノロジーは“音楽”」としながらも、3Dミュージッククリップのデモについて「音楽の体験を広げるものになるだろう」と感想を述べた。

USPSの事例と、Mayer氏の3Dミュージッククリップのいずれも、Flash技術のさらなる発展の可能性を感じさせる応用例だった。