同社には、国籍もカルチャーもバックグラウンドも異なる社員が数多くいる。また、社員によって取り扱う製品が異なるため、上司が行う社員たちの相対評価はかなり複雑なものとなる。逆に、評価される社員は、なぜそのような結果になったのか、相対評価のカラクリを明確に知りたいと考える。さらに将来、自分が何を身につけていくべきか。これも合わせて考えたいからだ。
そこで人材マネジメント手法の一つとして、その人がどのように力を発揮し、業務に役立てているかという「パフォーマンス」を評価し、一方でその人がどれだけの「ポテンシャル」を持ち、今後どんな能力を育てることができるかという点を見る。つまり、パフォーマンスとポテンシャルの組み合わせにより、その人のモチベーションを高めていくやり方だ。パフォーマンスとポテンシャルのマトリックスを本人に示し、上司が説明することによって本人に納得させるのだ。同社もこの手法に取り組んでいる。
保々氏は「納得感がとても大事」だと話す。不況になってくると、一般に人員削減や報酬カットなど行われるが、景気が回復した時に耐えてきた社員が会社に残ってくれるか否かは、マネージャーのコミュニケーション能力にかかってくる。
「辛い時ほど上司は言葉を尽くすべきであり、多くのことを部下に示してやるべき。それができれば、景気回復後は部下と一層強固な関係を築ける」(保々氏)
「点を線につなげる人材管理」とは?
ではそのために、オラクルの人事パッケージは具体的にどのような機能を提供しているのだろうか。
まず、人材採用と人材配置の精度を高めるための重要なサブシステムとして「タレントマネジメント (人材管理) 」がある。その精度を高め、人材を育成していくために活用されるのが「タレントプロファイル」だ。
タレントプロファイルは人材データを明らかにする。人事部だけではなく、現場のマネージャーも正しいデータを見ることができ、マネージャーと部下が会話をして、部下の目標を明らかにし、さらに目標を達成するために必要な能力や、磨く必要のあるスキルを明確にした上で、OJT(On the Job Training)や研修を受けさせる。
以前、本特集(「研修」は期待大でも効果小、その原因は?--調査で明らかになった人材育成の課題)で取り上げたように、OJTや研修が業績につながることを部下に納得させた上で実施することは重要だ。タレントプロファイルは「現在の潜在能力と業績をセットにして、目標に達しているか否かをマネージャーと会話する」ために用いるコミュニケーションツールだという。