2009年も残すところわずかとなった。
財団法人日本漢字能力検定協会が選んだ2009年の世相を表す漢字は「新」に決まったそうだ。同協会が「新」を今年の漢字にあげた理由には、政権交代による新内閣の発足、新型インフルエンザの蔓延、エコポイントなどの新制度の実施とともに、新たな環境技術、世界経済の変化、平和への新たな一歩、新たな時代がはじまる予感といった「未来への希望」としての「新」の要素も盛り込まれているとする。
今年最後のこのコラムでは、翻って、この「新」という漢字を日本のIT業界に当てはめつつ、2009年を振り返ってみたい。
新たなプロダクトという点では「Windows 7」がある。
10月22日に発売となったWindows 7は、パッケージ版の販売本数は発売当日だけで、Windows Vistaの3倍、最初の土日を含む発売4日目でWindows Vistaの1年分に匹敵する本数を販売。発売後10日間の出荷実績は、Windows XP、Windows Vistaをはるかに上回ったという。
PC本体の売れ行きにも好影響を及ぼし、社団法人電子情報技術産業協会の調べによると、10月の国内PC出荷台数は前年同期比21.5%増、11月も4.8%増となった。PC市場の回復に大きな影響を与えたといえよう。
マイクロソフトでは、2009年中にWindows Server 2008 R2やWindows Mobile 6.5といった大型製品も投入しており、さらに2010年にもOffice 2010やSQL Server 2008 R2のほか、クラウド時代に向けたWindows Azureといった大型プロダクトを控えており、その点でも「未来の新」につながるプロダクトが引き続き投入されることになる。
一方、オラクルの「Oracle Database 11g Release 2」「Exadata Version 2」の発売、インテルの「Xeon 5500番台」や「Core i5」「ノートPC向けCore i7」といった新プロセッサの投入、WiMAXの商用サービス開始などのほか、VMwareやHyper-Vといった仮想化技術が広がりをみせたという点でも、注目される新製品および新サービスが相次いだ。
そのほか、グーグルから「Chrome OS」が発表されたこと、第3世代となる「iPhone 3GS」や「Androidケータイ」の発売、コンシューマー領域では、Twitterが爆発的な広がりを見せたことなども注目される出来事だ。
2009年後半には、Google日本語入力ベータ版のリリース、Baidu Typeの公開によって、日本語入力に新たな一石が投じられた点も見逃せない。2010年にはジャストシステムの「ATOK 2010」、マイクロソフトの新世代MS-IMEが投入されるだけに、来年以降の動向が注目される。
一方、経営関連では、OracleによるSun Microsystemsの買収がここ数年のM&Aの中でも特に大きなエポックとなった。また、日本IBMの橋本孝之新社長による体制は1月1日にスタートしたものだった。新体制への移行という点では、9月に突然起こった富士通の社長交代劇も特筆されよう。
こうしてみると、IT産業の2009年にも「新」という漢字は、そのまま当てはまりそうだ。もっとも本来、IT産業は進化のスピードが速い業界とされてきた。日本漢字能力検定協会が今年の漢字を選んだ経緯にはIT産業発の「新」は含まれていなかったようだが、来年はぜひ、業界内にとどまらず、世界のあり方まで大きく変えるような「新」を、IT産業から創出していってほしいものだ。