ERP市場は縮小傾向のパッケージに対してASP・SaaS型が大幅な伸び--ITR予測

富永恭子(ロビンソン)

2010-01-29 16:53

 アイ・ティ・アール(ITR)は1月29日、ERPおよび連結会計のソフトウェアベンダー国内60社について製品調査を行い、国内市場規模および動向をレポートとしてまとめた。

 調査では、2007〜2008年度の市場規模実績、2009〜2013年度の予測、2007〜2009年度のマーケットシェアとその予測、市場分析を行っている。

 レポートによれば、2008年度の国内ERP市場の出荷金額は約918億円で、前年比3.0%の減少となったという。2008年度前半まで続いていたERP市場の成長は、2008年度後半に直撃した世界的な不景気の波により急ブレーキがかかり、マイナス成長をもたらしたとしている。2009年度はその傾向が強まり、前年比7.2%の減少と下げ幅が拡大する見込みだ。

 ERP市場を、パッケージとASPおよびSaaSの提供形態別で比較すると、2008年度のパッケージ市場は出荷金額が前年比で5.3%減少しているのに対し、 ASP・SaaS市場は同27.7%増となることが確認されたという。景気後退の影響を受けて、新規投資の凍結や延期の影響が色濃いパッケージに対し、アウトソーシングや初期のASPから徐々にサービスを拡充してきたASP・SaaSベンダーへの支持が堅調だったことが背景にあると分析している。2009年度もこの傾向は続き、パッケージ市場は前年比で約10%減、ASP・SaaS市場は約19%の伸びを維持すると見ている。

提供形態別国内ERP市場規模推移(出荷金額ベース) 提供形態別国内ERP市場規模推移(出荷金額ベース、出典:ITR「ITR Market View:ERP市場2010」)※出荷金額はベンダー出荷のライセンス売上のみを対象とし、3月期ベースで換算

 ITRのプリンシパル・アナリストである浅利浩一氏は、この調査結果について、「ASP・SaaS市場の成長性をけん引しているのは、主として人事給与分野でサービスを提供するベンダーだ。ただし、やや過熱気味ともいえるサービスの乱立が価格競争につながり、サービス単価の低下がベンダーにとって収益の圧迫を招いている。売上は伸びているものの利益の確保が難しいといった課題を内在しており、ユーザー企業は注意が必要だ。また、現在、SaaS、PaaS、IaaSといったクラウドコンピューティングがIT動向の中核となっているが、これまでオンプレミス型のERPパッケージを中心に発展してきた基幹系業務分野において、それがどのような革新を起こすかが、企業およびベンダー双方にとっての大きなインパクトとなるだろう。特に、現状では頭打ちとなっている中小企業向け市場の活性化への期待は大きい」とコメントしている。

 ITRでは、この調査結果の詳細を「ITR Market View:ERP市場2010」としてまとめている。

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