ナレッジ共有をリアルタイム化する方法
では、社内の情報や知識をリアルタイムに共有するメリットとは何か。ERPなどからの定型データのリアルタイムな可視化は実現しやすいが、営業日報や提案資料といった属人的に作られる定性情報はナレッジとして共有することが難しいとされてきた。それらがリアルタイムで共有できれば、経営判断の迅速化や顧客対応品質の向上、重大事故の早期発見などに大いに役立つのではないだろうか。また、チームでの協業体制がとりやすくなり、異なる考え方に触れることで新たな気付きが生まれ、ムダな重複作業を回避することで効率的に作業が行えるようになることも期待される。
だが、社内の情報が膨大な場合、単に共有するだけでは混乱を招くばかりで効率的な活用は望めない。そこで三浦氏はエンタープライズサーチや統計機能、BIやテキストマイニングなどを組み合わせることで、情報共有やナレッジ共有のリアルタイム性を高める方法を3つ提案する。
第1に、「定性情報の中の傾向を可視化する」こと。タグクラウドのようにキーワードの羅列ではなく、「○○業界の○○市場の業績が悪化している」とか、「△△向けの△△商品の評判が高まっている」といった複合化したナレッジを、自動的にパーソナライズして、リアルタイムにポータルやメールなどでプッシュする方法だ。
第2に、「ワンランク上の情報共有」である。例えば、過去の膨大な提案書やコールセンターに寄せられた情報から、案件ごとの受注、失注の理由や顧客の反応などを入手できれば、単なる情報がナレッジに生まれ変わる。
第3に、日本人が苦手な「情報の取捨選択」だ。リアルタイムな情報はRSSやSNSの新着、Twitterなどで収集できるが、人間が同時に消化できる情報量も、PCやスマートフォンなどで表示できるスペースも限られている。そこで、ナレッジポータルを活用することで、自分が得るべき情報、そうでない情報を選択する意識を養う。
「日々のビジネス活動で生み出される膨大な情報の中から、それぞれの役割や責任に応じて知っておくべき情報がナレッジとなる。そのため、リアルタイムナレッジを実現するには情報がナレッジに変った瞬間、自動的に本人に通知されるような仕組みが必要」と三浦氏は述べる。
次回は、ナレッジマネジメントのリアルタイム化を実現した事例を見てみよう。