富士通がクラウドに1000億円投資、海外で基盤整備へ--新規事業の創出狙う - (page 2)

冨田秀継(編集部)

2010-04-30 23:49

 クラウドへの投資、理由の一つ目は新規ビジネスの創出で、既に「農業や医療などいろいろ仕掛けをしている」という。今後は実証実験などへの投資が進みそうだ。二つ目はクラウド基盤の海外展開で、先述した5カ国で基盤整備を進める。三つ目はスーパーコンピュータだ。山本氏は「クラウドかどうかという議論はあるが」と前置きした上で、「クラウドコンピューティングのなかでスパコンのもつ意味、重要性がある。引き続きスパコンと次世代のテクノロジーに投資する」と述べ、「この3点で約1000億円の投資をかけていきたい」と意気込んだ。

 このように山本氏はスパコンの開発を継続する意向を示している。用途はクラウドだけでなく、「環境問題の解決におけるフラッグシップ」としても訴求していきたい考えだ。

2010年度の見通しは営業利益1850億円

 富士通は2009年7月に2011年度を最終年度とする中期経営計画を発表。そこでは、2011年度に過去最高益となる2500億円の営業利益を目指すことが掲げられていた。山本氏はこの計画について、次のように述べている。

 「(2500億円の営業利益という)目標を堅持したい。営業利益率は2011年度に5%を目指す。真のグローバルICT企業の仲間入りを果たすには、この程度の収益性は不可欠だ。また今後、海外売上比率を40%以上にするという目標も維持したい」

 「2010年度の(業績)予想では、営業利益を1850億円としている。昨年の中期計画では中間目標として2000億としていた。しかし、2011年度の2500億円達成をより確実なものにするため、クラウドや新しいビジネスの投資を2010年度で加速させる。具体的には、2010年度で1000億円程度の投資を考えている。市場へのコミットを考えたとき、この投資負担を考慮して、あえて慎重に判断し、今回は1850億円とした。当然、1850億円を十分とは思っていない。社内的にはさらなる上積みを目指す」

 2011年度に2500億円の営業利益を達成するために、今年はクラウドに大きく投資するという考え。加藤氏は2010年度の見通しを語るなかで、「補足」として次のように説明している。

 「(2010年度の業績見通しとして)売上は4兆8000億円。前年からは1204億円の増、3%の増収計画だ。既に回復局面に入っている(LSIなどの)デバイスソリューションに加え、企業のIT投資が(2010年)後半に回復すると予想している。(法人向けITサービスなどの)テクノロジーソリューションは、下期を中心に年間で増収の計画」(加藤氏)

 営業利益1850億円は、前年比で言えば906億円の増益。ほぼ倍増することになる。強気の計画だが、加藤氏はその理由を3つに分けて説明した。

 「一つ目の理由はリストラ効果、年金とのれんの償却費用の負担減。二つ目はIT市況の下期回復。三つ目はグローバルベースでの採算管理強化を徹底するという点。しかし一方で、2011年度につながる戦略投資の増額を盛り込んでいる。目標は2000億円だが、下期にリスクがあるため、現時点でコミットできる数字として、いったん1850億円にしている」

 構造改革を進め全てのセグメントを利益体質へと転換させたい考えで、富士通では上期に赤字セグメントが一つもない状況を計画している。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

関連記事

関連キーワード
富士通
経営

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]