日本企業の強みを忘れたIT部門の課題(中編)
(編集部より:日本企業のITの戦略や戦術はどこに課題があるのか。海外企業との比較から始まった“部長”との会話は、IT部門にとって永遠の課題でもある“人材”問題に及びます。前編はこちら)
ITの本質をわかっていますか?
「もう一つあります」
「何?」
「仕事が遅くなる理由、なんでかわかりますか?」
「意思決定って言いたい?」
「そうです。意思決定って、別に経営層だけの意思決定じゃありません。ホワイトカラーはあらゆることを意思決定していると思っています。そういう人たちが、意思決定が遅くなる理由、なんだか分りますか?」
「何?」
「必要な情報を探すこと、手戻りすること、モジモジすることが三悪なんです。必要な情報を探すことってのは、日本企業って大体データが揃っていなかったりするんで、いろんな部署に頼んでデータをかき集めるところからいろいろやらなきゃいけない。それを必死になって集計しなきゃいけない。日本のホワイトカラーって、逆にこの集計が上手くできるかどうかが、優秀かそうじゃないかの境目だったりしますよね」
「ウチの企画なんて、そればっかりやってるなぁ。そういえば」
「おかしくないですか? 企画っていう、会社の中での中枢が何をやっているかというと“集計”ですよ。もったいない…」
「ま、そうだよね」
「あと、手戻りって言うのは、上の方向性が変わったりするときにやり直しが発生する。あと、良くわからなくて“走りながら考える”っていう間違った判断を肯定するようなことを言うマネジメントがいる部署なんかで沢山おきている。ホワイトカラーの下の方なんて、こういう手戻りが随分発生している。テレビコマーシャルでも良くやっていますよね。これ、ものすごい無駄遣いですよね」
「走りながら考えるっての、痛いねぇ…その言葉」
「それから、モジモジって、何をやっていいかわからない時、これでいいのか判断つかない時、どう言っていいのか分らないときに発生し、ただ時間だけが流れていく。これは、特に若手に多いですよね。プライドが高く、人付き合いが慣れていないケースが多くて、『聞いてよ!』ってことが聞けない人が結構いたりする。そのために必要なことは、上の言う方向性をわかっていれば、手戻りなんて起きないし、これでいいかどうかをわかっていれば、モジモジなんてしない」
「ま、そうだよね」
「海外企業のIT化では、こういうことに対応するような方向にどんどん進んでいるんです。触りだけ言うと、IT部門が極端に言えば“メディア部門化”している。情報を集めてきて、整理・パッケージ化して、届ける。しかも、モダンなメディアですよ。イメージしていただくのは、GoogleとかFacebookとかThomson Reutersとか。あ、Thomson Reutersとかって、違和感ありますかね? でも、あそこ前調べたんですけど、ものすごいIT企業になっているんですよ」
「へぇ~そうなの?」
「あ、でもそれ、本論じゃないんで、今日はここまで。言いたいのは、それに比べて日本に目を向けてみると、日本企業って、ここへの取り組みが“Knowledge Management”という名の下に行われた文書管理で終わっちゃっているんですよね。要は電子化された図書館。元ネタだけは早く手にできるようになっているんですけど、それを使ってアンサーを作っていくところ、すなわちメディアから問題意識を高める記事を読み、自分なりの答えをイメージするのは、従来通りのままになっちゃっている」
「まぁ、言いたいこともわからんこともないけど、情報なんて集まってくるじゃない? それに、人づてで入ってくる情報こそ、実は手触り感があって、自分の考えに寄与するじゃない? 現に、宮本君、メール1本で来てくれて、この会話で僕はどんどん問題意識と解決の方向のイメージが湧いてきている」