IT人材育成の目的はどこにあるのか

宮本認 (ガートナー ジャパン)

2011-04-07 08:00

日本企業の強みを忘れたIT部門の課題(中編)

編集部より:日本企業のITの戦略や戦術はどこに課題があるのか。海外企業との比較から始まった“部長”との会話は、IT部門にとって永遠の課題でもある“人材”問題に及びます。前編はこちら

ITの本質をわかっていますか?

「もう一つあります」

「何?」

「仕事が遅くなる理由、なんでかわかりますか?」

「意思決定って言いたい?」

「そうです。意思決定って、別に経営層だけの意思決定じゃありません。ホワイトカラーはあらゆることを意思決定していると思っています。そういう人たちが、意思決定が遅くなる理由、なんだか分りますか?」

「何?」

「必要な情報を探すこと、手戻りすること、モジモジすることが三悪なんです。必要な情報を探すことってのは、日本企業って大体データが揃っていなかったりするんで、いろんな部署に頼んでデータをかき集めるところからいろいろやらなきゃいけない。それを必死になって集計しなきゃいけない。日本のホワイトカラーって、逆にこの集計が上手くできるかどうかが、優秀かそうじゃないかの境目だったりしますよね」

「ウチの企画なんて、そればっかりやってるなぁ。そういえば」

「おかしくないですか? 企画っていう、会社の中での中枢が何をやっているかというと“集計”ですよ。もったいない…」

「ま、そうだよね」

「あと、手戻りって言うのは、上の方向性が変わったりするときにやり直しが発生する。あと、良くわからなくて“走りながら考える”っていう間違った判断を肯定するようなことを言うマネジメントがいる部署なんかで沢山おきている。ホワイトカラーの下の方なんて、こういう手戻りが随分発生している。テレビコマーシャルでも良くやっていますよね。これ、ものすごい無駄遣いですよね」

「走りながら考えるっての、痛いねぇ…その言葉」

「それから、モジモジって、何をやっていいかわからない時、これでいいのか判断つかない時、どう言っていいのか分らないときに発生し、ただ時間だけが流れていく。これは、特に若手に多いですよね。プライドが高く、人付き合いが慣れていないケースが多くて、『聞いてよ!』ってことが聞けない人が結構いたりする。そのために必要なことは、上の言う方向性をわかっていれば、手戻りなんて起きないし、これでいいかどうかをわかっていれば、モジモジなんてしない」

「ま、そうだよね」

「海外企業のIT化では、こういうことに対応するような方向にどんどん進んでいるんです。触りだけ言うと、IT部門が極端に言えば“メディア部門化”している。情報を集めてきて、整理・パッケージ化して、届ける。しかも、モダンなメディアですよ。イメージしていただくのは、GoogleとかFacebookとかThomson Reutersとか。あ、Thomson Reutersとかって、違和感ありますかね? でも、あそこ前調べたんですけど、ものすごいIT企業になっているんですよ」

「へぇ~そうなの?」

「あ、でもそれ、本論じゃないんで、今日はここまで。言いたいのは、それに比べて日本に目を向けてみると、日本企業って、ここへの取り組みが“Knowledge Management”という名の下に行われた文書管理で終わっちゃっているんですよね。要は電子化された図書館。元ネタだけは早く手にできるようになっているんですけど、それを使ってアンサーを作っていくところ、すなわちメディアから問題意識を高める記事を読み、自分なりの答えをイメージするのは、従来通りのままになっちゃっている」

「まぁ、言いたいこともわからんこともないけど、情報なんて集まってくるじゃない? それに、人づてで入ってくる情報こそ、実は手触り感があって、自分の考えに寄与するじゃない? 現に、宮本君、メール1本で来てくれて、この会話で僕はどんどん問題意識と解決の方向のイメージが湧いてきている」

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. ビジネスアプリケーション

    生成 AI 「Gemini」活用メリット、職種別・役職別のプロンプトも一挙に紹介

  2. セキュリティ

    まずは“交渉術”を磨くこと!情報セキュリティ担当者の使命を果たすための必須事項とは

  3. セキュリティ

    迫るISMS新規格への移行期限--ISO/IEC27001改訂の意味と求められる対応策とは

  4. ビジネスアプリケーション

    急速に進むIT運用におけるAI・生成AIの活用--実態調査から見るユーザー企業の課題と将来展望

  5. セキュリティ

    マンガで分かる「クラウド型WAF」の特徴と仕組み、有効活用するポイントも解説

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]