前線に立つ従業員は、研究開発や製造などの部門をまとめて1つのユニットにした。このユニットが自律的に動くよう、目標設定、達成、報酬など、インセンティブアップを繰り返して成長するポジティブなフィードバックループを作った。
管理職は、顧客と接する従業員を支える役割を担う。従来は幹部が事業目標を設定し、部下に割り当てていたのとは逆だ。社員自らが作った目標なので失敗はなく、ゴールを達成できなければポジションが変わるようなこともあるという。このモデルになってから、チームメンバーのコラボレーションが増えて効率が改善した。
経営を支えるITシステム側でも改革が進んでいる。Haierは2008年夏より、SAPとともに「サプライオンデマンド」という在庫ゼロのサプライチェーン構築に向けた変革を進めている。地域によっては24時間以内の納品を守れなかった場合、代金不要と約束しているところもあるという。「設計・在庫」から顧客主導の「製造・デリバリー」モデルへと移行し、顧客の需要やニーズに合わせたプロセスを築くのだ。
Zhang氏は「製品を開発する前に顧客がいる。顧客は研究開発プロセスに参加している」と述べており、一連の取り組みによって収益性と顧客満足度が大きく改善されているとした。
Zhang氏はスピーチの中で何度か「マインドセットが必要」「モチベートすることが大切」と強調した。幹部の中には変化を受け入れるのが難しい人もいたというが、プロセスに刷り込み、イノベーションが生まれるシステムを築くことがポイントだったようだ。
Haierの改革はまだ道半ばだ。「成功の保障はない」とZhang氏は笑うが、自信も見え隠れする。Zhang氏の野望は、自社の改革を通じて中国の経営モデルを確立すること。たとえば、欧米では株主が優先だが、Haierはユーザーが最優先だという。
「中国には現在、企業や経営に関する文化がない。われわれはシックスシグマなど欧米のものを学んできただけで、独自のものはないのだ」とZhang氏、続けて「自分たちのモデルを確立したい」との思いを語っている。