転換迫られるソーシャルゲームのビジネスモデル

飯田哲夫 (電通国際情報サービス)

2011-12-27 08:00

 2011年12月16日に株式を上場し、780億円を調達したZyngaであるが、初日から株価は公募売出価格の10ドルを下回り、未だ回復していない。Zyngaの調達金額を見ても判る通り、ソーシャルゲーム市場への期待感は引き続き強いものの、そのビジネスモデルは既に最初の転換点を求められているようだ。

 BusinessWeek誌によれば、2011年第3四半期のZyngaの売り上げは、前年同期比80%増の3億680万ドルで劇的な成長を示している。一方で、利益は54%減の1250万ドルということで、売上規模拡大と反比例するように収益性が悪化している。この背景には顧客獲得に掛かるマーケティングコストが大きくなっていることがある。

 競争の激化、そして同じパターンのゲームに飽きたユーザーの乗り換えにより、ソーシャルゲームの収益化が以前より難しくなっている。そのために、顧客獲得のためのマーケティング費用が肥大化し、BusinessWeek誌は関係筋の話として、積極的な宣伝が行われているソーシャルゲームのうち、収益化が実現できているのは30%程度だろうと見込んでいる。

 今回のZyngaの上場はこうした競争環境の変化の最中に行われたもので、調達された資金はゲームの開発とマーケティングのみならず、そのビジネスモデルの転換にも活用されることとなるだろう。今までのビジネスモデルの収益性が下がる以上、投資家の期待収益はむしろ新しいビジネスモデルの成否に掛かっているとも言える。

 一方、日本においてはGREEやMobageなどのソーシャルゲームのプラットフォームプレーヤーの業績は堅調である。ループス・コミュニケーションズによると、GREEの課金売上の48%がサードパーティアプリケーションによると推定され、それはMobageにおいても39%に高まっている。つまり、プラットフォームプレーヤーも内製からサードパーティの開発者への依存度を徐々に高めているだけに、アプリ開発市場も順調に成長していくことが重要になる。

 仮に、米国のようにアプリ開発市場が多大なマーケティングコストを必要とするならば、資本力の大きい企業への集約化が進み、従来のゲームソフトメーカーのような世界へと収斂していってしまうだろう。なんとなく、そういう時期がくるにはまだまだ早いような気がする。もともとソーシャルの世界は、大規模なマスマーケティングとは対極にあるはずだったのだが。

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飯田哲夫(Tetsuo Iida)

電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。

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