2011年、Microsoftはウェブ開発者に対する同社のSilverlight戦略を大きく後退させた。さらにAdobeは、モバイル版Flashの開発を中止すると発表した(ただし、パートナー企業は開発を継続する可能性がある)。Flashがモバイル市場での普及度で「クリティカルマス」を突破できなかったことを考え合わせると、最善の場合でも、モバイルとデスクトップでは異なるFlash戦略を取る必要があり、最悪の場合は、多くのモバイルデバイスでは所有するFlashコンテンツをまったく見ることができないことになりそうだ。この混乱の原因はHTML5にあるのだが、その一方で、移行の準備ができていれば、HTML5はそれらの技術の代わりになり得る。この記事では、開発者がFlashやSilverlightでやっていることのうち、HTML5が代わりになり得る5つの分野を紹介する。
動画・音声
開発者によるFlashとSilverlightの用途のうち、もっとも重要なものの1つがマルチメディアだ。実際、YouTubeを計算に入れれば、ウェブ上でのFlashの用途は、その大半が動画の再生だと言える。幸運なことに、これはHTML5で対応できる機能の1つだ。HTMLには、マルチメディアを扱うために、<audio>と<video>という2つのタグが導入された。確かに現時点では、HTML5では特定のコーデックは定められていないのだが、動画コンテンツに複数の供給元を指定することが可能なため、同じ動画を利用者を十分カバーできるだけの種類のコーデックでエンコードしておけばいい。これが理想的な解決策かと言えば、必ずしもそうではないが、自分のコンテンツをYouTubeのような動画サイトに渡したり、自分で動画プレーヤーを作ったりするのに比べればずっとましだ。
グラフィック
FlashとSilverlightが使われる別の理由に、グラフィックをうまく扱えるというものがある。これまでHTMLには、様々なベクター画像を扱うシステムがあったし、現在のSVG標準のサポート状況は十分だ。しかし、HTML5の<canvas>タグは、ベクター画像のためのものではなく、ビットマップ画像のためのものだ。ビットマップ画像の処理はFlashとSilverlightが得意としているもので、HTML5以前には、ウェブ開発者はプラグインなしでこの処理を行うことはできなかった。<canvas>タグがあれば、ゲームやアプリケーションの可能性が大きく開ける。