余談になるが、一般教書演説に盛り込んだポイントをより明確に伝えるために、象徴する人物を招待するという慣例があることは、本文中の「ジャッキー・ブレイさんがミシェル・オバマ大統領夫人の隣に座っていた」というところで触れた。実はもう一人、予算案の目玉のひとつである富裕層への課税強化に関連して、これを象徴する人物が招待されていた。
「伝説的投資家」「オマハの賢人」として知られるウォーレン・バフェット(Warren Buffett)氏の秘書を長年勤めてきたデビー・ボザネック(Debbie Bosanek)さんというご婦人だ。
LoHud.comの記事「Finally, seeking accountability」に掲載されたAP通信の画像では、ミシェル夫人の右上、えび茶色のジャケットを着た金髪・眼鏡の年配のご婦人がボザネックさん、そしてその右隣が故スティーブ・ジョブズ夫人のローリーン・パウウェル(Laurene Powell Jobs)さんだ。
これはバフェット氏が昨年8月にNYTimesに寄稿したOp-Ed記事のなかで、課税原則の見直しを求める提言を行っていたことによるものだ。『もう大金持ちをあまやかすのは止そう』("Stop Coddling the Super-Rich")と題した寄稿記事のなかで、バフェット氏は「大金持ちの自分よりも、自分の秘書のほうが高い税率を課せられているのはおかしい」とした上で、投資などからの収入(いわゆる「キャピタルゲイン」)で多額の所得を得ている富裕層("Super-Rich")への課税率(現行の所得税率は15%)をもっと引き上げなくてはならないと主張していた(註7)。
この提言をふまえ、オバマ大統領は一般教書演説のなかで「年間100万ドル以上の収入があった世帯は最低でも30%の税金を支払うことにする一方、全米の98%を占める年収25万ドル以下の世帯ではこれ以上税負担が増えないようにするべき」と述べていた(註8)。
また実際に、今回示された予算案にも配当からの収入に対する税率を「現行の15%から最大39.6%まで引き上げる」とする項目が盛り込まれている(註9)。
ちなみに、バフェット氏はマイクロソフトのビル・ゲイツ(Bill Gates)氏と毎年「世界一の大富豪」の座を争っている人物で、またゲイツ氏とはカード(トランプ)友だちでもある「大の仲良し」。2006年には自らの資産の大半をゲイツ氏の財団(ビル&メリンダ・ゲイツ財団:Bill & Melinda Gates Foundation)に寄付するを発表して話題を呼んだ……などと始めるとまたキリがなくなるので、脱線はひとまずここまでで打ち止めとしたい。
次回は、すでに米議会でいくつかの動きが出ている多国籍企業の国外滞留金などの問題を中心に考えめぐらせてみたい。
註7:バフェット氏がNYTimesに寄稿したOp-Ed
註8:バフェット氏の提言を踏まえたオバマ大統領の発言
註9:予算案に盛り込まれた配当収入に対する税率
Mr. Obama proposed generating $1.7 trillion in new revenue over 10 years largely by ending Bush-era tax cuts for families who earn more than $250,000, restoring the estate tax to its 2009 level and limiting subsidies for oil and gas companies.
He also for the first time proposed raising the tax rate on dividends, from 15% to as much as 39.6%, for households making more than $250,000 a year. The White House said the measure would generate $206 billion in revenue over 10 years.