大きくなりすぎた?——「AAPL」の存在感
アップル自体の思惑は別にして、外部からの同社株式に対する期待はますます高まっている。
そのことは、冒頭で触れた株価の急上昇ぶりからも察せられるかと思う。
この存在感の増大について「他社とのバランスで、ちょっと危うい水準まで進んでいるのではないか」という話が、2月半ばに公開されたWSJの記事に載っていた(註5)。
この記事によると、たとえばナスダック(Nasdaq)に上場するテクノロジ系企業上位100社の時価総額があわせて約2兆8000億ドルであるのに対し、アップル1社で4750億ドルと、全体のほぼ6分の1を占めているという。そのほか、S&P 500全体の時価総額に占めるアップルの割合が3.8%に達し、2011年10〜12月期の利益の伸び(前年同期比)もアップルを含めた場合が6.6%なのに対し、アップル抜きでは2.8%に低下してしまう、といったデータが並んでいる。
まさに米株式市場全体が多分に「アップル頼み」になっている、と捉えることもできそうな状況といえよう。
また、やはりWSJに掲載された別の記事(米国時間3月14日付)には、「アップル株を持たなければ、運用成績で競合から取り残されてしまうのでは」という集団心理が、米国の投資信託(ミューチュアルファンド)のファンドマネージャーの間で働いているという話も出ている(註6)。
この記事によると、本来は外国企業や中小規模の企業を中心に投資するはずの投資信託までがアップル株式をポートフォリオに組み入んでいるところがいくつもあるという。
一定の割合以下であれば、目論見書に記した分野以外の企業に投資することは認められているというが、それでもこうした動きを非難する声も記されている。
大手投資信託のバンガード創業者であるジョン・ボーゲル氏は「中小規模の企業に投資するといっているファンドがアップル株式を保有するのは明らかに不適当(略)こうした動きは、ファンド投資家にとってがっかりするような結果を招くことになると思わざるを得ない。そうした事態がいつ起こるかはわからないが、しかしそれが起こることは間違いない」とコメントしている。
万が一アップルの株価が大きく値下がりし、それに引きずられる形でファンド全体の成績が下がるといったことになれば、投資家としては「そんなつもりではなかったのに」ということになりかねない、というわけだ。
さらに、配当のある企業に焦点を絞っていると謳うファンドのなかにもアップル株式に投資しているところが多くある。これらのファンドのマネジャーは、やはりティム・クックCEOから発せられたサイン(signs)とそれに約1000億ドルの余剰資金を株式保有の理由として挙げている。
同記事で紹介されているファンドマネジャーは、6カ月以内に配当実施があるとの見通しを明らかにした上で、次のようにコメントしている。
「アップルはとても優れた企業で、とても上手に運営されている。これでもし配当を出すようなことがあれば、まったく新たな種類の投資家を(同社株に)惹きつけることになるだろう」(註7)
現在のアップルは目先の株価の上下動に一喜一憂する必要がない。そのことは改めていうまでもないが、前述の通り「見切り発車」のような形で同社の配当を織り込む動きが出てきていることを考え合わせると、そうした期待が失望に変わるというリスクも浮かんでくる。アップルの株式市場全体に対する存在感がかつてなく大きくなっているだけに、そうしたリスクどう手当していくのかが注目される。
註5:アップルの株価、危うい水準では
Apple's Size Clouds Market - Wall Street Journal
註6:ファンドマネージャーの間で働く集団心理
Apple Inc.'s surging shares have prompted hundreds of mutual funds to buy the stock - including many that aren't expected to invest in a giant, U.S.-based technology company that pays no dividends.
註7:あるファンドマネジャーによる配当実施の見立て
Managers of dividend funds argue Apple may soon pay a dividend, given its $100 billion in cash and signs from Apple chief Tim Cook that he would be more amenable to a payout than his predecessor. Judith Saryan at Eaton Vance. Investment Managers bought Apple shares for two dividend-focused funds. She believes the company will pay a dividend within six months.
"Apple is a great company, it's well-managed, and if they do pay a dividend, they'll bring in a whole new set of investors," Ms. Saryan says.
Keep up with ZDNet Japan
ZDNet JapanはFacebookページ、Twitter、RSS、Newsletter(メールマガジン)でも情報を配信しています。現在閲覧中の記事は、画面下部の「Meebo Bar」を通じてソーシャルメディアで共有できます。