トレーサビリティ確保に向けたTERASの取り組み
2月の合同ワークショップでは、日本国内におけるソフトウェア品質の向上に向けた活動として、パナソニックによるスマートデジタルシステムへの取り組みや、アイシン精機による機能安全への取り組み、TERASによるトレーサビリティ確保に関する取り組み、TIDAコンソーシアムによる組み込みソフトウェアのテスティングモデル構築に対する取り組みなどが紹介されている。
そのうち、ソフトウェア品質監査制度の実現に向けたトレーサビリティの問題を解決するために、参考になるモデルとされているのがTERASの活動である。
複数の企業が関わる開発では、開発の現場ごとに使っているツールや文化的な背景が異なることから、工程間のトレーサビリティの確保が困難になりやすいという実情がある。そこでTERASでは、各開発現場で培った文化やノウハウを残しながら、外部の開発チームともシームレスに連携できるようなツールプラットフォームの構築を目指している。
具体的には、トレーサビリティ管理のための基本機能を核とするプラットフォームを用意し、そこに様々な開発支援ツールが接続して連携できるような仕組みを構築する。基本機能としては、トレーサビリティ管理のためのユーザーインターフェースやCRUD(Create/ Read/ Update/ Delete)機能、検索エンジン、トレーサビリティリポジトリなどが挙げられている。接続のためのインターフェースとしてRESTベースのデータ連携規格であるOSLC(Open Services for Lifecycle Collaboration)を採用することによって、ネットワーク経由でサードパーティとのデータ連携も可能なオープンなプラットフォームを目指す。

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※TERASの活動内容に関する詳細は、公式サイトで公開されている報告書・資料も参照してほしい。
利用情報のフィードバックにつながるTIDAコンソーシアムの取り組み
ユーザーの利用情報のフィードバックについては、参考になる取り組みとしてTIDAコンソーシアムの活動が挙げられている。TIDAコンソーシアムで取り組んでいるのは、ユーザーから寄せられたクレームや要望を、製品の開発現場での品質向上に役立てていくというもの。具体的には、コールセンターに寄せられたユーザーからのクレーム情報を解析してデータベース化し、どのような情報が寄せられているのかを分析する。その際、日本語の形態素解析や係り元と係り先の解析、構文パターンによる分類などといった技術を組み合わせることにより、どんなクレームや意見、要望が寄せられているかをすべて自動で分析できるようになっているという。
この分析結果は、ユーザーモデリングツールによるユーザー利用モデルの構築に利用される。ユーザーモデリングツールでは、ユーザーマニュアルに記載されている内容からモデル要素を作成し、そこにクレーム情報を取り込んだモデリングを行うことでユーザー利用モデルを作成する。さらに、作成したユーザー利用モデルからはテスティングツールによってテストケースを自動で作成することができる。これによって、ユーザーからのフィードバックを製品開発でのテストにまでシームレスにつなげるというのがTIDAコンソーシアムのフレームワークである。

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今後の活動予定
2011年度、IPAではソフトウェア品質監査制度の構築に向けて次のような活動を実施してきた。
- 各種規程やドキュメントの整備
- 監査基準の制定
- 審査基準作成ガイドラインの制定
- 模擬実験の開始
これに引き続き、2012年度の活動予定としては次の内容が挙げられている。
- 各種規程やドキュメントの改訂
- 各種認定プログラムの発行
- 実証実験を開始する産業分野の決定
- 実証評価
- 国際整合化へ向けた文書準備や海外機関との連携
最終的には2013年度の完成を目指して活動を進めていくとのことだ。
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