本特集「電機大手の2011年度決算を読む」では、これまでに大手8社の決算を解説することで、電機メーカーの課題と展望を示してきました。
第6回となる今回からは「事業」や「トレンド」という切り口で解説していきます。まずはじめに取り上げるのは、多くの電機メーカーの業績を左右する「テレビ事業」です。(ZDNet Japan編集部)
最終赤字の主因はテレビの不振
電機大手各社の2011年度連結業績で最も注目を集めたのは、やはりテレビ事業だろう。
パナソニック、ソニー、シャープの3社が過去最大となる最終赤字を計上した主因は、テレビ事業の販売低迷だ。さらにはテレビ事業およびパネル事業の構造改革による費用負担も重くのしかかっている。
各社のテレビ事業の赤字額を見てみると、ソニーは1480億円、パナソニックは約1000億円規模、東芝も500億円規模の赤字。シャープは具体的な数字を公表していないものの、「国内は大幅な赤字」(同社)としている。
では、なぜテレビ事業が赤字の元凶となったのか。
もはや為替の差を技術でカバーできない
マイナス3760億円という過去最大の赤字となったシャープ。新社長の奥田隆司氏に再建の期待がかかる。
2011年度という単年度の動きを捉えれば、主要市場となる国内において、7月の地上デジタル放送完全移行後の需要の反動により、大幅な販売減になったことがあげられる。
その落ち込みが各社の想定以上のものだったことが大きく響いた。
シャープが「下期は国内テレビ市場が4割を割り込む大幅な需要減」とすれば、東芝は「第3四半期(10〜12月)は前年同期比7割を超える落ち込み。第4四半期(1〜3月)も7割近い落ち込みになった」と語る。
もちろん需要の低迷は当初から想定していたが、各社幹部が異口同音に語るのは「予想以上の落ち込み」であったこと。これが収益悪化に直結した。
また、海外市場における価格下落の影響も見逃せない。
欧米などの先進国においては韓国勢がウォン安を背景とした価格戦略を打ち出しやすいのに対して、日本は超円高の影響がマイナス要素に働き、「もはや為替の差を技術でカバーできない」(シャープ)という状況。価格競争力を失ったことで販売数量を大きく減少させた。これも想定以上のものだったといえよう。
さらに新興国でも韓国勢や中国勢が躍進。国内メーカーは各地域に密着した製品群の開発によって需要の獲得に成果をあげつつあるが、効果はまだ限定的だ。
こうした「予想外」の影響は、年間を通じて各社が行った相次ぐ下方修正や計画割れの実績からも裏付けられる。