B)古い企業向けソフトウェアの世界への退行。ソーシャルソフトウェアの会社を買収しようとする企業の多くは、数十年の歴史を持つ古くからある企業向けソフトウェアベンダーだ。わたしはIBM、Microsoft、SAP、Oracleと長年にわたって関係を持っており、これらの会社が好きだし敬意を払っているが、多くの場合それらの企業は、今日の高度に一般消費者向けに特化した、ソーシャル、モバイル、クラウドに満ちた世界の感性を、単純に持ちあわせていないことが多い。それこそが、大手ベンダーが刺激的な新興企業を手に入れようとする理由の1つだ。これは新しい血を入れるには素晴らしい手段だが、往々にして、買収側が新興企業から受ける影響よりも、新興企業の方が買収側から受ける影響の方が大きい。ソフトウェアが運用され、販売され、供給され、価値を提供する方法が、大きな転換点をいくつも迎えている今、これは企業にとって不幸なことだ。
新興ソーシャル企業は業界でいかに消化されているか:要素の分析
わたしは最近、ソーシャルコンピューティング市場におけるソフトウェアの大型買収について分析し、いくつかの興味深い結論を得た。ソーシャル業界の「太陽系」の図を見て欲しい。この図では次のような分類をしている。
- 大手ソーシャル企業(big social):Facebook、Twitter、LinkedInなどの、巨大な公開ソーシャルネットワーク。
- 新参大手企業(new guard):最新世代の企業向けソフトウェアベンダー。
- 古参大手企業(old guard):数多くのソフトウェアの革新を生き残ってきた、この市場で長年続く企業。
- 新興企業(startups):これらは新興ソーシャル企業だが、この図では買収されたものだけを挙げている。
この図から、資産を多く持っている業界の支配的なプレーヤーほど、多くの買収を行っていることがわかる。以下にその例を挙げる。
- Salesforce.com:Buddy Media、Rypple、Assistly、Radian6
- Jive:Proximal Labs、Filtrbox
- Oracle:Collective Intellect、Vitrue、RightNow
- Facebook:Instagram、Gowalla、Glancee、Divvyshot、Hot Potato、FriendFeed、Lightbox、ShareGrove、他
- LinkedIn:SlideShare、Rapportive
GartnerのアナリストMichael Maoz氏は最近のブログ記事で、大手企業が新たな考え方にいかに弱いかを説明し、同時に大手ベンダーの重力井戸に落ちていく小さいが革新的な新興企業が増えていると述べている。
これは言い争っても仕方がないし、嘆くべきことでもない。大手ベンダーは、ものを買ってくれる消費者とどのように関わるかを探る「周辺」で革新を起こすことはない。ソーシャルメディア、デジタルマーケティング、広告表示、コンテンツの個人化、プレゼンスに基づくサービス、コラボレーションおよびソーシャルネットワークの分析、評判管理--これらはすべて、「大手企業」の持つ能力の外にあるが、支払える金額に収まらないわけではない。大手企業はプラットフォームを作り直し、資金を投下し、規模を拡大する。
今後生き残れる大手企業は、(おそらく)IBM、Oracle、Microsoft、そして今ではGoogle、Apple、Facebookだけだろう。他の企業は、本物の惑星の軌道に落ちてしまう。それは構わない。目をよく見開いて、自分が向かう方向を見極めれば、イノベーターとともに素早く革新を起こしていくことができるだろう。
残念ながら、これは真実であるかもしれず、企業顧客はこれを織り込んでおくべきかなのだろうが、彼らにとって必ずしもこれが最善のシナリオであるとは限らない。