顧客企業はどう対応すべきか
では、これで何が失われ、それらの買収される企業の顧客にとって最善なシナリオはどのようなものだろうか。テクノロジ業界で起こるM&Aのショーとスペクタクルはしばしば、1つの形になっている。投資家は利益を得たいと思っているが、結局は、顧客を第一に考える企業は、そうでない企業よりもいい業績を残す傾向がある(実際、最新のデータによれば、顧客体験を重視するリーダーは、業界平均よりも22.5%よい業績を上げており、そうでないリーダーは46.3%下回っている)。
実際、わたしが関わっている企業顧客の多くは、凝り固まったベンダーに対するリスクヘッジとして、新興企業を高く評価している。それらの新興企業が買収されると、それらの顧客は何千もある顧客の1つになってしまうことに気づき、非常に失望することが多い。さらに悪いことに、自分たちが使っていた製品を業界の中で優れたものにしていた特徴が、ますます匿名的なものになりつつある一群の企業向け製品の中の歯車に過ぎなくなるというリスクもある。
では、顧客企業はどうしたらよいのだろうか。アプリストアがソフトウェアを供給するモバイルIT市場によって、ソフトウェアの切り替えが容易になっていること、ソーシャルメディアに関してはしばしばIT部門のリーダーシップが弱いことを併せ考えると、企業には十分なリスクヘッジが必要だ。ベンダーの売り込みにもあまり意味がない。従って企業は、ソフトウェア市場は近年の状況よりもずっと流動的なものになると仮定せざるを得ない。新たなプレーヤーが現れては消えるスピードはますます大きくなり、企業が柔軟性と即応性を維持するためには、特定のベンダーへの依存を減らし、ソーシャルソフトウェアのオープン標準を(データと相互運用性の両面で)重視せざるを得なくなるだろう。
いずれにせよ、ソーシャルメディアは企業のアーキテクチャの周辺にかなり浸透しつつある。まもなく、ソーシャルメディアソリューションのポートフォリオ管理と合理化が次の大きな課題になるだろう。わたしは以前2009年の主要な100のソーシャルビジネスソリューションを追跡したことがあるが、今は当時と同じくらいの数の新興企業がエンタープライズ2.0市場に登場している。ソーシャルビジネス市場における革新と起業家精神の勢いは、弱まるどころか強まりつつある。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。