ソーシャルソフトウェア新興企業は大手ベンダーに飲み込まれるのか

Dion Hinchcliffe (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2012-06-27 07:30

 ソーシャルソフトウェアの終局は、製品の大半が大企業の傘下に収まるという結果に終わるのだろうか。Microsoftが企業向けマイクロブログサービス企業であるYammerを買収するという発表があったが、これは業界の収束が初期段階に達したということだろうか。あるいは、違うのだろうか。

 企業向けソーシャルメディア、一般消費者向けソーシャルメディアの両方の市場で、いくつかの企業が突出し、自らの運命を切り開いている。例えば最近では、FacebookがLinkedInとJiveの後を追い、株式公開会社としてソーシャル業界で独立した地位を築いた。その一方で、業界でそれなりの価値命題を持つ企業のほとんどは、買収コースに向かっている。

 ソーシャルメディア業界があらゆる面で成熟するにつれて、終局に向けてのおおまかな道筋が見えてきているのかもしれない。あるいは、結局のところ、まだ局面は続いていくのかもしれない。コラボレーションソフトウェア、ソーシャル顧客サービス、ソーシャルマーケティング、ソーシャルメディア分析などを提供する、現在成功しているすべての会社は、すでに買収の検討対象になっているか、それなりの規模に達した時点で対象になる可能性が高い。その多くは、劇的なIPOができるほどの牽引力を持っていないし、投資家を喜ばせるだけの大規模な買収が行われる規模にもなっていない。実際、今はまだソーシャルメディア企業が多すぎ、十分淘汰されていない状態だとわたしは考えている。

 それでも、買収する側には、今動かなくてはならないという大きな圧力がかかっている。この動きに拍車をかけているのは、例えばiDCが最近発表した、ソーシャルソフトウェアとチームコラボレーションが、今年ソフトウェア業界でもっとも成長する3つの主な分野のうちの2つを占めるという予想などだ。業界リーダーは、成長力を持った市場に投資しないという危険は冒せない。

 したがって、適切な材料から適切なサービスを構築できる企業の大型IPOが可能な場合や(例:Facebook)、どうしても成長路線を続けなくてはならない企業(例:Oracle、SAP、Microsoft、IBMなどの大手ソフトウェアベンダー)があることを考えると、淘汰が進んでいないからと言って、それらの企業が思いとどまることはない。実際、買収対象の企業が小さいうちに、展望が開ける兆しが見えた時点で買収をした方が、それらの企業が成功して価値が高騰し、買収価格も跳ね上がってから買収するよりも賢いという見方もある。

 残念ながら、これは買収される企業やその顧客にとって、常によいこととは限らない。新興ソーシャル企業が大企業に選ばれて取り込まれ、1)既存の製品に組み込まれるか、2)その企業が持つソフトウェアスイートの完成度を増すために、あまり関連のない製品の中に組み込まれた場合、いくつかの大きな問題が生じる。

 A)ソーシャルな要素に重心を置けなくなる。買収する側の企業は多くの場合、幅広い製品や関心、競争分野を持っている。買収は吸収される側の企業を希薄にしてしまい、多くの場合、もともとその会社が持っていた本来の強みの多くを失わせてしまう。新興企業を引っ張っていた創立者は、現金が渡され、新しい組織では役割を失ってしまうことが多い。その結果、買収された製品の独自の要素と強みは鈍化し、浸食される。これは、従来の企業向けソフトウェアとは大きく性質が異なるソーシャルソフトウェアでは、特に顕著だ。

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