タブレット端末「Surface」の発表でMicrosoftが方針転換を世に示した1週間前、Appleは新型「MacBook Pro」を発表して時計の針を戻して見せた。実際、長年テクノロジ業界に関わってきたが、これほど興味深い時期がこれまであっただろうか。
PCは死んでしまったわけではないが、デスクトップ市場は危険な状態にある。デスクトップメーカーは悪戦苦闘しており、世界最大のメーカーであるHewlett-Packard(HP)でさえ、戦略や未来について不安を見せている。
世間一般には、AppleはポストPC時代に向けて容赦なく突き進んでいると思われている。近年、Appleの製品発表はやや予想できないものになってきた。世界が「iOS」とモバイルに向けて突き進んでいる一方、Macに関しては多少の減速要因といくつかの小さな改良があっただけだった。
Appleはより多くのモバイル製品を出して、進化させ続けており、「iPhone」「iPad」「MacBook Air」は変化し、成長し、祝福されている。その一方、MacBook Proや「iMac」「Mac Pro」などの製品ラインはあまり注目を集めず、変化も微々たるもので、Mac Proに関しては停滞していると言ってもいい状態だった。
ところが同社は6月、突然あまりにも魅力的なMacを出してきた。わたしは以前、今後支配的になるコンピューティングプラットフォームとして、iPadの台頭を評価する記事を書いたが、古くからのMacファン層にもようやく勝利が訪れたわけだ。
Retinaディスプレイ版「MacBook Pro」の発売は、Appleの過去と未来に対するアプローチ、そして競合他社に対する影響力を象徴するものだ。
提供: Sarah Tew/CNET
Appleのデザインとエンジニアリングに対する投資
新しいコンピュータのいずれかを数分使ってみれば、それを生み出すだけのデザインとエンジニアリングに対する投資が行われたことに気づく。これはまったく予期されていなかったことであり、価値の復活だ。わたしは昼休みに何度もApple Storeを訪れ、ピクセルが見えないか確かめようとした。
強力だが古くなったMac Proにさえ、よいニュースがあった。Mac Proには目立たない小さなアップデートが施されただけだったが、Appleの最高経営責任者(CEO)からはさらに大きな約束があった。Tim Cook氏は電子メールでの質問に答えて、2013年にはMac Proのファン向けに「本当に素晴らしいもの」が提供されると約束したのだ。10月にはRetinaディスプレイ版のiMacが発売されるという楽観主義的なうわさも流れている。
Retinaディスプレイ版MacBook Proの発売は、Appleが過去と未来の両方にアプローチしていること、そして競合他社に対して影響を与えようとしていることを示している。
Appleは以前から、テーマを設定する企業だと言われている。今では、Appleは他の大企業にビジネスの転換を迫る企業になっている。
現在PC市場がよい状態にないことは否定できない。PCは古い商品ではないが、この停滞した市場で利益を上げているメーカーはほとんどない。皮肉なことに、もっとも大きな利益を上げているのはAppleだ。
しかし同時にAppleは、タブレットコンピューティングで確実に、そしてスマートフォンで大きく、ポストPC時代に向けた進化をリードしている。