組織内の文化
筆者は、組織内の文化自体がプロセス改善の取り組みを極めて困難なものにしている環境で仕事をしたことがある。早い話がほぼすべての作業において、取り組みから身を引いたり、取り組みに参加することを拒否する権限が個々の従業員に与えられていたのである。プロセス改善の取り組みによって個人の弱点や、グループの直面している問題が洗い出される可能性もあることを考えた場合、改善の取り組みを引き受ける際にある種の不安に苛まれるのは十分理解できるはずだ。
筆者はある組織において、人々がさまざまな作業を何のためらいもなく拒絶しているのを見てがくぜんとした経験がある。こういった環境でのプロセス改善の取り組みは極めて難しいものとなるため、プロジェクトにおいてリーダーシップを発揮する役割を担う人々は、筆者が見てきた限り、その他の取り組みにおける場合よりも時間をかけ、専念することが求められる。
もう1つ例を挙げてみよう。ある副社長は大がかりなプロセス改善の取り組みにおいて、作業が完了するまで他の大きな作業を持ち込まないという口約束をしたうえで、チーム内の特定メンバーから数カ月間にわたって状況報告を受けることを確約していた。ところがお察しの通り、この約束は守られず、チームはさまざまな指示によって引っかき回された結果、どのイニシアティブも期日に間に合わせることができず失敗に終わったのだ。
対策:こういった環境では、粘り強く、かつ慎重にイニシアティブに取りかかり、作業を始める前にリーダーシップが正しく機能することを確認しておいてほしい。また、プロジェクトの重要性が組織全体で認識されていることも確認しておいてほしい。さらに、参加に二の足を踏む人が出てこないよう、成果に応じた報酬や補償を検討してほしい。そして、チームメンバーが病気になったり、ある種の約束が守られなかったといった、特殊な条件下で適用される期日とともに、すべてのコミットメントを文書に明記しておくようにしてほしい。
非協力的なチームメンバー
組織の文化が原因で取り組みが失敗したり、一部のチームメンバーに資質の問題が持ち上がる場合もある。ただ、組織自体が健全であっても、敵がい心を持っていたり、取り組み全般に対して消極的なチームメンバーがいることもあるはずだ。チームというものは理論的に、何らかのプロセスにおいて利害を共有する人たちで構成されるため、最善の結果を得るには全員が協力し合わなければならないのである。
対策:対立の背景にあるものを見極める。プロセス改善の目的が要員面でのダウンサイジングである場合、それによって失職する可能性のある従業員からの協力を期待することはできない。さらに、従業員の直面する状況を何とかしようとするのではなく、従業員自身にしわ寄せするようなビジネスプロセス改善プロジェクトは、失敗すると思った方がよいだろう。