日立製作所がソフトウェアとハードウェアを統合した垂直統合型のシステムとして「UCP(Hitachi Unified Compute Platform」を発表したことが、2012年の話題の1つになった。業務アプリケーションの実行環境であるPaaS基盤構築向けと、仮想化環境をつくるIaaS基盤構築向けの2つの製品パターンを展開する。UCP発表の狙いを日立の担当者に聞いた。
UCPの特徴は、1990年代半ばから幅広い企業に利用されてきた統合運用管理ソフトウェア「JP1」による運用支援だ。稼動監視ツールによる障害対処プロセスの迅速化、省力化、監視サービスによってシステム障害の予兆監視、定期診断など、ノウハウを必要とする作業にこれまでのJP1の利用実績が生きてくる。
吉村誠氏
また、仮想化環境の構築テンプレートを使うことにより、VMware環境を15分程度で立ち上げられることも特徴という。日立の試算によれば、従来15日かかっていたものがUCPを使うことで15分で済むようになった。
また、動作検証済みであるため、採用企業は導入コストを抑えられる。吉村誠氏(日立製作所 ソフトウェア本部 システム基盤ソリューション部 担当部長)は「キッティングして納入するため、作業が減り、初期コストは従来の半分程度になる」と話す。
ハードウェアとソフトウェアを最適化して処理を高速化しているわけではないが、サポート対応窓口が日立1社に決まることなど、ユーザー企業にとっての利点は多い。
図のように、UCPを構成するのは、最下層がサーバ/ストレージ/ネットワーク、その上が仮想化ソフトウェア、さらにシステム管理ソフトウェア、ミドルウェア、運用サービスの各製品だ。
このうちPaaSは、ミドルウェアを含めた実行環境を提供する。複雑な運用オペレーションの自動化、プライベートクラウドを構築するユーザーを想定しているという。一方、IaaS基盤モデルは、大規模データセンターを運用するクラウドサービス事業者が対象ユーザーだ。
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海外の社会インフラにも進出する情報通信事業
日立の情報・通信システム事業の2012年3月期における売上高は1兆7642億円で、営業利益率は5.8%、海外売上高比率は約25%だ。それを2015年度には売上高で2兆3000億円、営業利益率で8%超を目指す。海外売上高比率は35%を見込んでいる。
Hitachi Unified Compute Platform
藤井啓明氏
日立は世界で戦える組織を目指し、クラウド、スマート情報、ビッグデータ活用などの成長事業に注力する考えだ。併せて、システム導入を柱とするシステムソリューション事業と、UCPに最もかかわるプラットフォーム事業拡大も視野に入れる。
日立の藤井啓明氏(プラットフォーム事業本部 事業統括本部 企画本部 ストレージ企画部)は「ビッグデータを活用し社会にイノベーションを起こすのがわれわれのビジョン」と話す。
具体的には、交通情報や衛星データ、環境センサ、RFIDデータを統合プラットフォームであるUCPに格納し、JP1で管理しながら、情報を分析し、航空や交通などの社会インフラや企業の情報システム上での活用を図るといったイメージだ。
日立はグループ全体として考えると、新幹線などのインフラ構築事業が新興国を中心とした海外市場で高く評価されるなど、今後の伸びが期待できる。この領域と情報・通信システム事業を組み合わせることで、積極的にシナジーを高めていく考えだとしている。
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