競合よりも優れた収益を出している“高収益企業”ほど、ITが業務効率の向上目的だけでなく、自社ビジネスの主要分野で重要な役割を担っている――。英経済誌「Economist」の調査部門である「Economist Intelligence Unit」の調査で明らかになっている。
Juniper Networksから委託を受けたEconomist Intelligence Unitは、米英独日の4カ国のIT担当役員や企業経営幹部などを対象に、企業でのIT部門の役割やITに対する認識を調査。回答者数は474人、51%が最高経営幹部と取締役であり、残りは上級役員と管理職となっている。
高収益企業とそれ以外を比較すると、テクノロジが自社の業績に果たす役割で「非常に大きい」と回答した割合は高収益企業の方が20%高いという。ITが新たな市場機会を特定し、ビジネスの成長を後押しするという点で「強く同意する」と回答した割合は、高収益企業の方が11%高い。
新しい製品やサービスの開発支援では、ITの関与が「非常に高い」という回答は高収益企業の方が8%高く、ビジネスのニーズに対するITの貢献度を常に、もしくは頻繁に計測するという回答は高収益企業の方が11%高いという結果になっている。
調査結果から、IT部門の大半はビジネスを成長させる牽引役としてみなされていないが、調査対象の企業各社は、ITの役割がこれまでのような効率化という役割から、ビジネスを成長させる原動力へとシフトしていくであることを示唆していると分析している。回答者の61%が、今後3年間の新しい製品やサービスの開発でITの関与について「非常に緊密になる」または「ある程度緊密になる」と回答している。
その一方で現時点で、ITとビジネスの連携で戦略的なビジネス目標を達成している企業が少ないのが現状とも分析している。実際、ITの役割として「新たな市場機会の特定」が9%、「新たなイノベーションの特定」が6%、「競争戦略の策定」が5%という結果だ。ITによる、ビジネスの成長への対応状況では、21%が「非常に限定的」または「準備していない」というのが実態だ。
ITとビジネスの連携を妨げる最も大きな障害は「連携の実現が経営幹部の優先事項ではない」(36%)、「連携を促進できるスキルを持った熟練した従業員がIT部門にいない」(28%)、「連携に必要な資金」(25%)などが挙げられている。日本では、44%が連携を促進できる人材がIT部門にいないと回答。ほかの国と比較すると人材の確保が最も大きな課題となっていると説明している。
今後3年間で企業の競争力に最も影響を及ぼすであろう重要なトレンドとして「ネットワークを通じたコラボレーションと情報共有」が31%、「モバイル端末の広範な普及」が31%、「コネクテッドデバイスと統合システムのユビキタス性」が27%となっている。日本では、48%が「ネットワークを通じたコラボレーションと情報共有」を挙げている。
今後3年間でビジネスに成長をもたらすことが期待されるテクノロジ分野の自社の投資対象として「ビジネス情報分析」が33%、「ビジネスプロセス管理」が31%、「クラウドコンピューティング/仮想化」が29%、「モバイル端末」が26%となっている。日本では22%が「システムセキュリティ」が自社の主な投資対象になるとしている。
Economist Intelligence Unitの副編集長であるRozina Ali氏が以下のようにコメントしている。
「ITは依然、プロセスの効率化というこれまでの役割で評価されている。しかし、デジタル化の進む世界を本当の意味で活用するには、新たな機会を特定するコラボレーション役としてのITの潜在的な価値を認識する必要がある」