われわれがポストPC時代として描写するようになってきている根本的な変化の背後にあるのは、OSのモバイル化だ。これはスマートフォンやタブレットを使用する膨大な数のコンシューマーがモバイルプラットフォームというものを受け入れた結果である。
モバイルOSを搭載するデバイスは、われわれが現在経験しているコンピューティング上の基本的な変化から見ると副次的なものでしかない。ポストPC時代の原動力となる最大のインパクトはOSのモバイル化なのである。
この変化を主導する、「iOS」や「Android」に代表されるモバイルプラットフォームによって、ユーザーは常にネットワークに接続できて当たり前だと考えるようになっている。これらのプラットフォームは、ユビキタスな接続を活用し、そのコンピューティング能力はこういったプラットフォームの親とも言える携帯電話のそれを凌駕するくらいにまで進化しているのである。
モバイル操作環境がネットワークに常時接続されることで、アプリのエコシステムが生み出され、モバイルOSがそれまでのものよりもパワフルになった結果、従来のデスクトップOSとモバイルOSの違いがなくなってきた。
こういったコンピューティング能力の進化によって、故Steve Jobs氏がポストPC時代の幕開けを高らかに宣言するきっかけにもなったタブレットが台頭することになった。大きな変化をもたらしたものがハードウェアではなく、モバイルOSとアプリのエコシステムであったという点で、同氏の読みは半ば的中していたと言える。ユーザーが必要とする能力を提供するOSがなければ、ハードウェアはただの置き物でしかないのである。
常にオンラインでいることが当たり前だという考えこそが、ポストPC時代の中核をなしている。そしてデスクトップOSの大半の機能がこういった考えを前提とするようになってきている。Microsoftの最新版「Windows」を見れば、そのことは明らかだろう。
WindowsはPC時代の主役となっている一方で、「Windows 8」はどのプラットフォームと比べても遜色ないくらい、ポストPC時代を見据えたものとなっている。というのも、画面のタッチやスワイプによって操作する、モバイル機器にインスパイアされたタイル状のスタート画面の背後では、ほとんどの処理を完遂させるうえでネットワークの常時接続が必要となっているためだ。
すべてのモバイルプラットフォーム(そしてWindows 8も間違いなくモバイルプラットフォームである)に共通しているのは、ネットワークに常時接続しておくことで、あらゆる作業において最大限の効果が発揮されるという点である。アカウントを設定しておけば、どのような物理デバイスを使用してもコンピューティングが行えるようになり、ユーザー情報が格納されているクラウドストレージも直ちに利用可能となる。このため、ネットワーク接続を切断すると、エクスペリエンスは低下することになる。