MOOCの光と影
MOOCというムーブメント自体が始まって間もないせいか——つまりマイナス面を云々される段階に至っていないか、フリードマンの採り上げ方にもサービスの「光」に焦点を当てた部分が目立つ。
たとえば、コーセラで現代詩の講義を受けたダニエルという男の子。多動症で自閉症の17歳のダニエルは、課題提出を求められるような教育らしい教育を事実上はじめて受けることができ、しかも外の世界とつながれる喜びさえ感じられた、という話が出てくる。
あるいは、電子回路に関するエドエックスの講座に参加したモンゴル在住の15歳(性別不明)が講座をみごとに修了、最終試験では満点をとり、その後MITとUCバークレーに入学願書を提出中という話。あるいは、エジプトはカイロ在住の受講生が途中で脱落しそうになったところ、やはりカイロに住む別の受講者が実際に会って助け船を出した、という話などなど。
MOOCは教える側にとっても新鮮な体験のようだ。「世界113カ国から参加した約4万人の受講生と一緒に、テキストを一行ずつ精読していった」「講義終了後、数時間の間に何百というコメントや質問がオンライン掲示板に書き込まれた」「講座開始から三週間で、それまでの教師人生を通じて得たよりも多くのフィードバックを受けとった」などというプリンストン大で社会学を教える教授の話も載っている。
「講座を修了できるのは登録者のごく一部(多くが途中で脱落)」「これだけ多数の受講者がいると、成績をつけるのもたいへん」「将来どう事業化していくかの目星もこれから」など、大きな課題もある。
New York Timesの別の記事には、「修了できるのは登録者全体の5%以下」「採点・評価方法については模索中。受講者同士の相互評価の結果と、教授らが付けた評価の結果を比較して、その相関度(乖離の具合)などを調べている」などとある。
だが、それでもMOOCが刺激的に感じられるのは、フリードマンが指摘する変化の可能性にあるのだろう。