メリット薄れる中国への生産委託、米企業は北米回帰へ

三国大洋

2012-03-12 14:13

 本特集「三国大洋のスクラップブック」では、これまでに「iエコノミーの光と影」と題したシリーズを中心に、アップルと米国の政治経済——特に大統領選挙と法人税改革、製造業における雇用創出に関する論考を示してきた。

 前回の「アップルが米大統領選で政争の材料に」では、米経済の再生、そして自らの再選の鍵を握る最重要項目として製造業での雇用創出に肩入れするオバマ大統領が示した法人税改革案、さらにこれと並行する形で動き始めている「Repatriation Tax」の改定に向けた議論などに触れた。

 今回は少し回り道することにして、一部で進みつつある米製造業の「北米回帰の流れ」や、従来の「ブルーカラー」のイメージとは異なる広義の「ハイテク製造業」の仕事(「スマート・ジョブ」:"Smart Jobs")について取り上げてみたい。

ビジネス誌の表紙を飾った「ブルース・スプリングスティーンの背中」

『Bloomberg Businessweek』2月27日号の表紙
『Bloomberg Businessweek』2月27日号の表紙

 Bloomberg Businessweek誌(以下、ビジネスウィーク)の2月27日号は、いよいよ佳境に入ろうとしていた米共和党予備選——2月28日のミシガン・アリゾナ両州、そして3月6日の「スーパーチューズデー」に当て込んだ選挙の話題を特集記事に据えていたが、この表紙にある懐かしいレコードジャケットの写真が使われていた。

 1984年にリリースされたブルース・スプリングスティーンのアルバム『Born in the USA』のジャケットである。

 もっとも、このジャケット写真の向こう側に背中をみせて立つミット・ロムニー候補という構図、そして表紙左上に大きく黒字で描かれた「Scorned in the USA」(「米国で馬鹿にされて」といった意か)という文字から受ける印象は、「ロムニー候補がどれほど一般労働者から支持されていないか、あるいは有権者の『民意』に通じていないか」を伝えようとするビジネスウィーク側の意図であり、決してロムニー候補がブルース・スプリングスティーン(の歌)に共感するブルーカラーの人々のヒーロー的存在になっている、というものではない(註1、2)。

 また特集記事の中味自体も、ロムニー候補がPE(プライベートエクイティ)ファンドのベイン・キャピタル(Bain Capital)でCEOを務めていた時代に、買収した企業をどのように扱ったかを、主に「経営合理化」の対象となった工場労働者の話から再構成したもので、明らかにロムニー候補が選挙戦でアピールしているビジネスマン時代の「雇用創出(の手助け)」の実績を否定する(あるいは、少なくとも「中和する」)ことをねらったもの、との印象を受ける(註3)。(註の終わりに次ページへのリンクがあります)

註1:ロムニー候補、ミシガン州で辛勝の背景

スーパーチューズデイが終了した時点で、ロムニー候補は400人以上の共和党代議員を獲得し、2位のサントラム候補(200人以下)との差を大きく広げた。それにもかかわらず、ロムニー陣営のモメンタムは「ぶっちぎり」とは言い難い状態のようだ。

生まれ育ったミシガン州ではサントラム候補に辛くも勝利したが、同州がロムニー候補にとって縁の深い土地柄——アメリカンモータースのCEOだったロムニー候補の父親がかつて同州の知事を3期も務めていたにもかかわらず、サントラム候補に接戦に持ち込まれ、なんとか勝利をものにしたという有り様で、これもひとえに「庶民の気持ちがわからない」という同氏の評判につけ込まれたといった指摘が出ている。

Romney is trying to avoid the embarrassment of losing in the state where he was born and his father was a popular three- term governor.

"Michigan Primary to Test Santorum as Romney Challenger" - Bloomberg


註2:大金持ちのロムニー候補

Voters like Snyder, who is undecided, face a choice between two leading candidates with very different styles: Mitt Romney, a co-founder of the private equity firm Bain Capital LLC with a penchant for references to his wealth, such as last week's offhand remark that his wife drives "a couple of Cadillacs," and Rick Santorum, a coal miner's grandson who boasts about his "working-class roots."

Romney, a former Massachusetts governor whose fortune is estimated at up to $250 million, has struggled to connect with voters of modest means. Santorum, a millionaire former U.S. senator from Pennsylvania, leads his rival among those with household incomes between $30,000 and $50,000 by 34 percent to 29 percent, according to a March 2 Quinnipiac University poll. That's down from a 19-point Santorum advantage in a Feb. 27 Quinnipiac survey.

"Ohio 'Little People' Urge Republicans to Help Working Class" - Bloomberg


註3:ロムニー候補が生み出した「雇用」

"Mitt Romney's Box of Kryptonite"

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    Pマーク改訂で何が変わり、何をすればいいのか?まずは改訂の概要と企業に求められる対応を理解しよう

  2. セキュリティ

    従来型のセキュリティでは太刀打ちできない「生成AIによるサイバー攻撃」撃退法のススメ

  3. 運用管理

    メールアラートは廃止すべき時が来た! IT運用担当者がゆとりを取り戻す5つの方法

  4. セキュリティ

    2025年はクラウドを標的にする攻撃が増加!?調査レポートに見る、今後警戒すべき攻撃トレンド

  5. セキュリティ

    最も警戒すべきセキュリティ脅威「ランサムウェア」対策として知っておくべきこと

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]