PC業界関係者に久しぶりに明るい表情が戻ってきた。
というのも、Windows 8発売後も低迷を続けてきたPC需要を喚起する明るい材料が揃い始めてきたからだ。
PC業界が直近の効果として期待しているのが、3月末に決算が集中する国内企業のIT投資の活性化だ。
これまで企業のIT投資は停滞傾向にあったが、アベノミクス効果のひとつである円安に大きく振れたことで、海外事業比率が高い一部企業で予想以上に業績が上昇。期末に向けてIT投資予算の拡大を検討するといった動きが出てきている。
中期的に見ても、PCの需要を喚起する要素が出てきている。
ひとつは、Windows XPからの買い換え需要の顕在化である。
Windows XPは2014年4月8日に製品サポートライフサイクルが終了。それ以降、セキュリティ更新プログラムの提供停止など、サポートを打ち切ることを発表している。
業界の試算では、現在国内で利用されている約7000万台のPCのうち、約半数がWindows XP環境で動作しているとされており、今後1年2カ月で3000万台以上の買い換え需要が想定されるとも見られる。
デジタル家電業界では、地上デジタル放送への完全移行により、テレビの買い換え需要が喚起されたが、PC業界にとってそれと同じような意味を持つ需要が見込まれることになる。
ここでは、Windows 8への移行よりもWindows 7への移行が見込まれそうだ。
大手企業はWindows 7の導入検証を進めてきた経緯があり、その対策が終了しつつある。しかも、タッチ機能などを搭載しない分、Windows 7搭載PCの方が低価格で導入できるというプラス効果もある。
マイクロソフトが定める規定では、最新OSの発売後2年間は既存OSを搭載したPCの生産が可能であり、PCメーカーはあと1年半以上にわたってWindows 7登載PCの生産が可能だ。
企業需要では、Windows 7が引き続き高い構成比を占める可能性がありそうだ。
また、2013年第3四半期以降には、第4世代Core iプロセッサであるHaswellが登場。これがUltrabookにも搭載されることになる。米インテル幹部は、2013年末にはUltrabookの価格帯を599ドルの普及価格帯にまで引き下げる方向性を示しており、こうした動きも今後の需要には影響を及ぼしそうだ。
さらに、Ultrabookの登場やWindows 8の登場などによって、より用途を限定したPCの開発が促進されており、これが「一家に一台」から「一人一台」環境への進展を促すことにつながる可能性がある。だが、ここではタブレットやスマートフォンとの競合も視野に入れる必要があろう。
一方、政府は総額13兆1054億円の大型補正予算措置や、平成25年度税制改正大綱を通じて、安倍政権が掲げる「大胆な金融政策」「民間投資を喚起する成長戦略」「機動的な財務戦略」という3本の矢を軸とした政策を推進。これがPC業界にもプラス効果になるのではという期待も高まっている。
IT減税や中小企業情報基盤強化税制の復活といった直接的な減税措置は、今回は見送られたことに対して、PC業界からも残念がる声があがるが、PCは様々な領域での活用が期待されるだけに、企業の設備投資の増加に伴ってPC需要が喚起されることにも期待が集まる。
さらに、明るい材料がある。
それは、2014年4月に予定されている消費税率8%引き上げ前の駆け込み需要である。
1997年4月の消費税率5%への引き上げ時にもPCの販売が上昇しており、これと同じような需要が期待されるのだ。
さらに、消費税率は2015年10月には10%にまで引き上げられることになるため、継続的な需要喚起が見込まれるというわけだ。
こうしてみると、今後数年間に渡って、PC業界には明るい話題が相次ぐのがわかる。しかも、Windows 8に加えてWindows 7搭載PCでの提案も可能であり、消費率引き上げ前やWindows XPサポート終了直前の需要にも、「こなれたWindows 7」を活用することができる。
問題は、円安の進展によって輸入に頼るPCの基幹部品コストが上昇、これが最終価格に転嫁される可能性だ。すでに周辺機器を含む一部の製品では値上げなどの動きもある。
付加価値提案によってこれを吸収するという動きもあるが、低価格モデルに需要が集中しがちな企業向け需要では、この効果も限定的になりそうだ。
コスト上昇のなかで、どれだけ企業向けPC需要を喚起できるか——これがPC業界の課題だといえよう。
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