日本オラクルは3月12日、カスタマーエクスペリエンス(Customer Experience:CX)に関するグローバルの調査報告書「Global Insights Succeeding in the Customer Experience Era」の日本語版を発表した。ウェブサイトからダウンロードできる。
調査は、委託を受けてO'Keeffe & Companyが2012年8~9月に実施。世界各国1342人(うち日本は75人)の企業幹部がオンラインアンケートで回答している。最高経営責任者(CEO)や最高執行責任者(COO)、最高マーケティング責任者(CMO)、最高情報責任者(CIO)、最高技術責任者(CTO)というCxOが主に回答。中には、Chief Customer OfficerやChief Experience Officerといった役職を据え置いている企業もいる。
CXは、一般的に「顧客経験価値」や「感動体験」という言葉で説明され、その意味するところは「品質や機能といった商品やサービスそのものの価値だけではなく、購入したり使用したりする過程の経験からも得られる価値」とされ、「商品の付加的魅力として差別化要因になる」と言われている。
日本オラクルの道下和良氏(製品事業統括 アプリケーション事業統括本部 CRM/HCM事業本部 本部長)はCXについて「“感覚的、感情的価値”の方が分かりやすい」と言及している。その商品やサービスに触れることで「嬉しい、誇らしいという気持ちになれる」(道下氏)ことが重要だからだ。
道下氏はCXが必要とされる理由として「商品やサービスそのものの差別化、価格での差別化が難しくなってきたため、新たに差別化のための戦略が求められている」と表現している。背景にあるのは、グローバルでの競争激化、製品のコモディティ化、従来型マーケティングに対する疑問、より消費者が増してきた消費者の声といったものがあるとしている。
調査からは、CXを提供することは企業の収益にとって極めて重要であるという認識が判明した。ブランドにふさわしいCXを提供できないための生じる損失は年間の売り上げの20%に推定される、と経営幹部は認識。93%の経営幹部はCXの改善が、今後2年間の最優先課題上位3つのうちの1つであるとも回答している。
だが実際には「多くの企業は取り組みを始めたばかり」(道下氏)。91%の企業は、CXのリーダー企業とみなされることを望んでおり、37%がCXの取り組みを始めたところだ。自社のCXの取り組みが先進的と認識している企業は20%にとどまっている。この現実は「理想と現実が乖離している“エグゼキューションキャズム”」と表現される。
CXでの乖離はこれだけではない。企業と顧客の認識もかけ離れている。経営幹部の49%は「顧客は満足できないCXが原因で、ほかのブランドに乗り換える」と分かっているが、実際に「不満足なCXが原因で、ほかのブランドに乗り換えたことがある」とする顧客は89%に上っている。
また、「顧客は優れたCXのためであれば、進んで対価を支払う」と考える経営幹部は44%。だが、「優れたCXには、すでに対価を支払っている」と回答する顧客は86%となっている。認識レベルの乖離、“パーセプションキャズム”が起きていると指摘されている。
顧客からの声としては、ソーシャルメディアが大きな役割を果たすようになっていることはもはや誰の目にも明らか。そこで、優れたCXを提供するには、ソーシャルメディアを有効活用する必要があるとする経営幹部は81%。ソーシャルメディアが有効であることは分かっている。だが、実際に「販売チャネルで使用するソーシャルメディアがない」と「カスタマーサービスで使用するソーシャルメディアがない」は両方とも35%となっている。
つまり、企業は顧客が望む体験を十分に提供できていない。優れたCXを効果的に提供するための取り組みは「改善の機会が大いにある」(道下氏)。CXを提供できるのは、大きく分けて購入する前と購入した後に分けられる。以下の項目は、CXを提供する取り組みとして注目されているが、実際に成功しているのは半数に満たない。
(購入前)
- 顧客のセグメントと好みに基づいた適切な提案や情報提供を行い、コミュニケーションをパーソナライズする(43%)
- 顧客があるチャネルで開始した購入処理を、別のチャネルでシームレスに継続できるようにする(35%)
(購入後)
- 顧客に任意のチャネルでのセルフサービス機能を提供する(41%)
- モバイルやタブレットを通じたサービスとサポートの提供(39%)
- ソーシャルメディアとサービスのプロセスを統合する(35%)
- 顧客の行動、顧客とのやり取り、商品やサービスの取引を単一のビューに取り込み、管理することで、顧客のニーズやパターン、好みを把握する(28%)