日本IBMは4月12日、オールフラッシュストレージ製品「IBM FlashSystem」を発表した。4月15日から出荷する。フラッシュメモリを活用した1Uサイズのソリッドステート(SSD)システムで、設置スペースや消費電力を低減しながら、高速データ処理を実現。同社の特許技術により、データを保護しながら高い処理性能を発揮できるとしている。
税別価格は、eMLCによるフラッシュメモリを搭載し、使用可能容量が24.7Tバイトの「IBM FlashSystem 820」は最小構成で3041万2000円、使用可能容量10.3Tバイトの「IBM FlashSystem 810」は最小構成で840万9600円、SLCによるフラッシュメモリを搭載し、使用可能容量12.4Tバイトの「IBM FlashSystem 720」は最小構成で3041万2000円、物理容量5.2Tバイトの「IBM FlashSystem 710」は最小構成で840万9600円となっている。
波多野敦氏
同社のシステム製品事業ストレージ事業部 事業部長の波多野敦氏は、「多種多様でリアルタイムに創出される大量のデータを、スピーディに分析し、企業の意思決定につなげていくことが経営者の課題であり、この結果、過去にないほどの高い技術が求められている。経営者の間でも、テクノロジに対する関心が高まっている」と新製品の背景を解説した。企業ITのこれまでを振り返って、課題があったと付け加える。
「1980~2010年にCPU性能は年率60%向上しているが、ディスク性能は年率5%の向上に留まっており、ギャップが広がっている。ディスク装置が社会イノベーションのボトルネックになっていたともいえる」
そうした背景から波多野氏は、今回のFlashSystemについて「こうした課題を抜本的に解決し、これまでのストレージの常識を覆すものになる。今後のIT動向を左右する重要な発表になる」と位置付けた。
「1ラックあたり2200万IOPSという圧倒的な性能と、1Pバイトという集積率を誇る。ハードディスクで同じものを作ろうとすると野球場ひとつ分の巨大なデータセンターが必要になる計算。さらに100マイクロ秒という高速な応答時間を達成している。これまでのフラッシュでは信頼性に対しての不安があったが、エンタープライズレベルの高い耐久性を持っている。置き換えるだけで大きな効果がある」(波多野氏)
同社のシステム製品事業テクニカル・スペシャリストの佐野正和氏はFlashSystemを「フラッシュストレージのために最初から設計した製品」と説明。FlashSystemのメリットをこう表現した。
佐野正和氏
「ハードディスク(HDD)が乗用車であれば、SSDは市販スポーツカー。だが、今回の製品は専用にデザインしたという点でレーシングカーと同じ位置付け。省電力、省スペースを実現しながら、HDDベースのストレージと比べて、通常ディスクで約4000個分、キャッシュ搭載大型ディスクで約500~600個分のデータ処理能力を発揮する。オンライントランザクション処理(OLTP)の時間を90%短縮するとともに、データのバッチ処理にかかる時間を85%短縮。エネルギー消費量を80%低減できる」(佐野氏)
代表的なデータベースソフトウェア「Oracle Database」を利用した場合、アプリケーションやデータベースの構造を修正することなく、1Uサイズの筐体を追加するだけで、最大12倍の性能向上が実現できることや、データベースライセンスと保守費用が約40%削減できるといった結果も公表した。
「ある流通卸事業者では、ライセンスコストで50%削減、レイテンシ(遅延)低減で処理時間を6倍向上し、フロアスペースで75%削減を達成した」(波多野氏)