三国大洋のスクラップブック

意外な組み合わせが面白い--「TIME 100」テクノロジ分野の人選と人物評

三国大洋

2013-04-26 19:19

 米国の老舗雑誌TIMEが18日に「世界でもっとも影響力のある100人」の2013年版を発表していた(註1)。

 今年で10回目になるこのリストについては、「左前になったメディア企業が発行する紙の雑誌についての話のほうがずっと面白い読み物になるはずだが、それでも『なんとか100リスト』みたいな「listicle」(「番付け記事」)はみんなが大好き」などという痛烈な皮肉(AllThingsDのカラ・スゥィッシャー)も聞かれるが、中には意外な顔ぶれも混じっていたりして、やはり面白いことに間違いはない。

 今回の「TIME 100」に「日本からはユニクロの柳井会長が選ばれた」とか、「オバマ米大統領夫妻や中国の習近平首席夫妻、それにビヨンセとジェイ・Zが夫婦そろって選ばれた」とか、あるいは「テクノロジ業界、シリコンバレー関係者も複数リスト入りした」とかについては、おそらくほかで既に取り上げられているはずなので、ここではあえて触れない。かわりに、選ばれた人たちについて寄せられたほかの著名人からのコメント--「誰のことを、ほかの誰かがこう言っている」という組み合わせなどについて、少し紹介してみたい。

 この組み合わせの面白さに気がついたのは、Instagramの共同創業者ケビン・シストロムについて、ライアン・シークレストというメディア業界の人間の言葉が引用されていたのを目にした時のことだった。ヤフーのCEOになったマリッサ・メイヤーについて元上司のエリック・シュミットがその人となりを説明する言葉を寄せていても何の不思議もない。

 Samsungの権五鉉(クォン・オヒョン、Oh-Hyun kwon)副会長兼CEOについてジョン・スカリー(「Appleをダメにした経営者」とされることが多い元CEO)が「ソニーの盛田昭夫、Appleのスティーブ・ジョブズとならぶ(至難の業を成し遂げた)経営者」と持ち上げているのも、ちょっとしたヒネリは効いているけれど、決して従来の枠組み(「業界の線引き」みたいなもの)をはみ出たものともいえないと思う(註3)。

 また、Tesla MotorsとSpaceXのCEO、それにソーラーシティ会長と「三足のわらじ」を履くイーロン・マスクについて、Virgin Group総帥のリチャード・ブランソンが言葉を寄せているのも「宇宙旅行つながり」だとわかる人にはほぼ妥当な組み合わせと思えるかもしれない(註4)。

 一方で、Instagramのシストロムの場合のように、あまり想像の付かない人がコメントを寄せている例もある。Facebook関係者でもうひとりリスト入りしたCOOのシェリル・サンドバーグもそんな例だが、こちらは「巨人」(Titan)のカテゴリーでしかもフェミニズムの大御所グロリア・スタイネムがコメントを寄せている。例の「リーン・イン」(Lean In)の影響だろうが、たまたまGoogleやFacebookでキャリアを積んだというだけでテクノロジ業界とはあまり関係なさそうな文脈にも思える。

 Googleからはジャレッド・コーエンという人物が選ばれている。今年31歳でGoogle Ideaという社内シンクタンクを率いるこのユダヤ系米国人は、大学院時代に中東各国を放浪、その経験をまとめた『Children of Jihad』という書籍を出版。

 その後米国務省勤務を経て2010年から現職。Googleからお金を出させて、世界を良くするためにテクノロジをどう使えばいいかについての研究を実践を通じて進めているという。なおコーエンに対するコメントをウォルター・アイザクソン(元TIMEのマネージングエディター/CNNのCEO兼会長、スティーブ・ジョブズの公認伝記本著者)というのも興味深い。


[The Dark Side of the Digital Revolution - WSJ]

 今年初めにあったシュミットの北朝鮮訪問にもこのコーエンが同行していたようだ。間もなく発売になる書籍「The New Digital Age: Reshaping the Future of People, Nations and Business」はエリック・シュミット会長とこのコーエンの共著である。

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