三国大洋のスクラップブック

「ハリウッド一の嫌われ者」と呼ばれたチャーリー・アーゲン--ディッシュ会長

三国大洋 2013年04月18日 07時30分

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「一匹狼の億万長者どうしの決闘」

 「アメリカでいちばん意地悪な会社」として以前に紹介したことのあるディッシュ・ネットワーク(以下、ディッシュ)が、米国時間15日にスプリントへの買収提案を発表。経済・テクノロジ分野の話題を扱う米国のメディアなどでは、このニュースが大きく取り上げられていた。

 また日本でも次のような感じで報じられている。


 先週後半にBloombergで「ディッシュが10億ドル近い額の軍資金をかき集めた」などと報じられていたから、「そのうちなにか仕掛けてくるんだろうな」くらいには思っていた。だが、その相手が噂の出ていたT-モバイルでもなく、あるいはすでに獲得の意志表示をしていたクリアワイア(スプリントが株式の過半数を保有)でもなく、まさか「スプリント本体とは!」という感じで、この見出しを目にしたときには私自身もけっこう驚いた。

 「さすがに海千山千のギャンブラーはやることが違う」とちょっと感心したりもした。


Dish Network’s Charlie Ergen Gets Real: The Full Dive Into Media Interview
(2月にあったAllThingsDの「D: Dive Into Media」に登場したチャーリー・アーゲン。生まれた時から一度も有料テレビ放送に加入しない、ぜんぶスマホとタブレットで済ませてしまうような若い世代--コード・ネバー (code-never)がこれからどんどん増えるとして、「タバコ会社のやり方を真似て、彼らが大学に入学したときに、寮の部屋でタダでテレビを観られるようにしてテレビの味をしめさせるようにしたほうがいい」などと述べ、観衆の笑いを誘ったりしている)

 「一匹狼の億万長者どうしの決闘」(註1、2)とWSJが書いた、孫正義ソフトバンク社長とチャーリー・アーゲン(ディッシュ)会長とのこの戦いがこれからどうなるか。その点自体についてはすでにいろんなところで書かれているはずなので、ここでは「見てのお楽しみ」とさせていだたく(あしからず)。

 その代わりに、今回はこの決闘の「観戦ガイド」になるような話を書きたいと思う。ネタ元は4月のはじめに公開されていた「ディッシュ・ネットワークのチャーリー・アーゲンは、ハリウッドで一番の嫌われ者」(註3)という題名のThe Hollywood Reporter(THR)記事である。

 なお、この記事については一点注意が必要と思える。The Hollywood Reporterはその名の示す通りハリウッド(テレビ・映画業界)関係者向けの業界誌であり、また同誌のほかにAdweekやBillboardなども保有するプロメテウス・グローバル・メディア(Prometheus Global Media)という親会社自体が、もとはといえばニールセンの出版事業を外に切り出したもの。

 また今年はじめから同社のCEOを務めているが、フォックス(インタラクティブ)、ヤフーと渡り歩き、一時はヤフーの暫定CEOも務めていたロス・レビンソーンというメディア業界の人物。そんな人たちが同業者向けに出したものだから、内容のほうも自ずと利害が衝突するディッシュに対してかなり厳しいものになる……。「これは“FUD”(Fear, Uncertainty and Doubt)かもしれないな」というような印象さえ受けてしまう。


註1

Dish Network Corp. made a $25.5 billion bid for Sprint Nextel Corp., kicking off an old-fashioned merger brawl that puts two maverick billionaires with designs on the U.S. wireless industry on a collision course.

Billionaires Duke It Out for Control of Sprint

 なおこの記事にはディッシュ、スプリント、ソフトバンク3社の規模を比較した図が出ているが、それによると事業の評価額ではディッシュが210億1000万ドル(そのうち負債が46億5000万ドル)に対し、スプリント 336億ドル(同161億4000万ドル)、ソフトバンク 609億6000万ドル(同160億ドル)とディッシュはソフトバンクの3分の1強。

 また2012年の年間売上高も、ディッシュが143億ドルに対し、スプリントは353億ドル、ソフトバンクは325億ドルと、半分以下に過ぎない。これだけ単純な評価額や売り上げだけで判断できるとは思わないが、それでもディッシュのアーゲンは自分よりはるかに規模で勝る相手に挑戦状を叩きつけたのだから、やはり相当の勝算があってのことかとも思えてくる。


註2

BloombergのBillionairesランキングでは、アーゲン会長が88位(推定資産115億ドル)、孫氏が96位(同110億ドル)となっている(米国時間4月16日時点)。このランキングは、インタラクティブなものーー世界の大富豪が持つ資産の増減を反映して日々順位が入れ替わったりするものなので、今後2人の順位が逆転したり、差が開いたりすることもあるのかもしれない。



 この記事の冒頭には、1980年にあったというあるエピソードが出ている。当時まだディッシュの立ち上げ前で、プロのギャンブラーになろうとしていたアーゲンは、仲間とレイク・タホ(タホ湖、カリフォルニア州とネバダ州の境にあるリゾート)にあるカジノに乗り込んでブラックジャック(トランプのゲーム)をしていたが、ほかのプレイヤーの手札を仲間に見させてリップシンク(くちパク)で伝えさせているところを警備員に見つかり、賭場からつまみだされた、という話である。

 冒頭からこういうエピソードを出してくる書き手の意図は、単に「話のつかみ」だけでなく、「アーゲンがそういうことをビジネスのなかでも平気でやる人物」という点を示唆するためだろう。

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