富士通は2012年4月より、独SAPの「Best Practices」と呼ぶ基本テンプレートセットを利用したソリューションサービスを、海外進出する顧客向けに展開している。
グローバル競争時代に生き残りを賭けて戦う日本企業をシステム面で支援するもので、これまでの作り込み型のERP導入を見直し、グローバル標準に沿ったERP構築により差別化を図る戦略だ。
成長分野であるグローバルソリューション戦略について、富士通の産業流通システム事業本部、ERPビジネスセンターでシニアディレクターを務める前村和史氏に話を聞いた。
独自の「進化」を遂げた日本のERP、グローバルでは裏目に
SAP Best Practicesは、ERPなど業務アプリケーションスイート「SAP Business Suite」の基本テンプレート群。財務、製造、物流といった基本シナリオ、自動車、化学、産業機械製造といった各分野のノウハウを集めた業種のシナリオがあり、50カ国以上に対応している。富士通は今回、これを利用して急増中の海外進出する日本企業のシステム案件に応じる。
富士通の産業流通システム事業本部、ERPビジネスセンターでシニアディレクターを務める前村和史氏
実は、Best Practicesそのものは新しいものではなく、2003年頃に日本版が出ていたという。だが、日本のプロセスには合わないなどの理由から利用は進まず、結果としてベンダーはその上に独自のテンプレートを構築していた。富士通もその1社である。
だが、いざグローバル展開となると、これらのテンプレートをひとつひとつ設定しなければならず、作業の手間や時間がかかり過ぎる。顧客の中には10~20カ国で展開しているところも少なくない。スピードの時代だ。顧客のグローバル展開を支援するにはすぐに使えるシステムを提供する必要がある。
「数年前から日本の顧客が海外展開している子会社のシステム案件が増えた」と富士通の前村氏。そこで、SAPのBest Practicesを見直すことになったという。SAP本社でのワークショップなど共同作業を通じて検証を重ねた結果、グローバル向けはBest Practicesを採用するという方針を社内で固めた。
だが単にBest Practicesを提供するというだけでは差別化は図れない。そこで、多数のテンプレートを1つに組み合わせることで付加価値を付けた。これにより、顧客固有のニーズに柔軟に適用でき、ローカライズなど一括対応が可能になった。