例えば、PtoPレンディングであれば、誰がどういう目的に使うのかを理解した上でお金を拠出することができる。また、クラウドファンディングであれば、自分が支援したい企業やプロジェクトに対してお金を投じることができる。
同じ1万円であっても、いわゆる金融商品と呼ばれるものを買うことと、自分が支援したいものに投資するのでは、その意味や得られる体験は全く異なるものとなる。
価値観の変化とお金
Lynda Gratton氏は、その著書『ワーク・シフト』において、2025年のわれわれの価値観がどう変化し、それに伴ってわれわれの働き方がどう変わっていくのかを描いてみせた。
彼女はその中で、「消費より経験を重んじる生き方への<シフト>」(P370)が起きると予測する。労働に対する対価も金銭的価値ではなく、経験的価値、つまりその労働を通じてどのような経験を得られるのか、そこにどのような意味があるのかが重要になると言う。
こうした価値観やワークスタイルの変化は、お金に関する人々の姿勢も変えていくことになるだろう。つまり、全てを一律に額面のみで測ることができるというお金の利便性ではなく、そのお金にこめられた意味を重視し、それがどのように得られたもので、どのように使われるのかにフォーカスがあたることになる。
すると、金融サービスの提供ということを考えた場合にも、金利の優劣や運用の巧拙のみで金融商品を議論する時代も終わるのではないだろうか。これからは、顧客の付与するお金の価値をいかに重視したサービスを作れるか、という時代がやってくるのではないだろうか。
自作の紙幣を使おうとするBoggsの一見バカバカしいアートパフォーマンスは、そんなことをわれわれに問い掛けているような気がするのである。
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飯田哲夫(Tetsuo Iida)
電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。