明治大学の黒川農場とルートレック・ネットワークスが推進している、ICTを活用した農業の実用化研究成果に関して、その内容が公開された。同研究は2012年8月から実施しているものであり、IaaS/PaaS「Windows Azure」の上にM2M型のICT養液土耕システム「ZeRo.agri」を構築した。
ビニールハウスでのトマトの栽培でセンサで農業情報を収集。最適な施肥や水やり量を導き出せ、Windows 8搭載タブレットでデータを管理できるという。同研究を通じて、施設栽培の施肥と水やりの最適化、そして自動化ができると説明。「農産物の商品力を強化によって、日本の農業に付加価値をもたらす取り組み」と位置付けている。同研究には、セカンドファクトリーと日本マイクロソフトが協力している。
明治大学 農学部 教授で黒川農場 農場長の玉置雅彦氏
明治大学 農学部 特任教授で黒川農場の小沢聖氏
ルートレック・ネットワークス 代表取締役社長 佐々木伸一氏
黒川農場は、明治大学創設130周年記念事業の一環として、2012年4月に川崎市麻生区に開所。約12ヘクタールの総面積を持ち、年間を通じて体験型実習教育と研究活動に対応できる施設としている。
明治大学農学部教授であり、黒川農場の農場長である玉置雅彦氏は「黒川農場の開所初年度は農学部の学生だけを対象にしていたが、2013年度からは文系の学生にまで農業体験の対象を広げている。環境共生、自然共生、地域共生の3点に取り組んでおり、今回の研究成果は地域共生の取り組みのひとつになる」と説明した。
明治大学農学部特任教授の小沢聖氏は「日本の農業は、高齢化による農業衰退、就業人口減少、肥料による環境汚染、TPP(環太平洋経済連携協定)への準備などのグローバル化といった課題がある。これに対応するために、ICTを活用した、環境保全型の攻めの農業が求められている」と、今回の取り組みの狙いを語った。
農業分野でのICT活用では、大規模農場向けが中心となっており、日本の農家には高価になること、管理技術への結びつきが弱いために各種データが農業活動に生かされていない、平均年齢66歳という農業従事者にとってICT機器が壁になっている、農作物の販売先確保などの出口戦略の強化、といった点に課題がある。
ルートレック・ネットワークス代表取締役社長の佐々木伸一氏は、「センサから情報を集めることで、最適な状況を分析し、栽培管理指標を作れる。クラウドで低コストでシステムの導入が図れ、施肥や水やりの省力化、2~3割の収量が上昇といった実績が期待できる。また、タブレットでICTにはアレルギーがあった人にも使いやすいというメリットもある」と語る。