「若かったから」始めたトーバルズ氏--「Linuxがどこに行くのか分からない」

森英幸

2013-06-07 08:00

 国際会議「LinuxCon Japan 2013」は3日間にわたり、Linuxとオープンソースソフトウェア(OSS)の最新の開発動向を伝える興味深いセッションが多数行われたが、その中でもLinuxコミュニティのリーダーであるLinus Torvalds氏の対談「Linux:Where Are We Going」(Linux:どこに向かっているのか)は、今回のLinuxConの目玉と呼べるものだろう。

 Torvalds氏の対談相手を務めたのは、IntelのChief Linux and Open Source TechnologistのDirk Hohndel氏だ。対談は、Hohndel氏や会場からの質問にTorvalds氏が答える形で進行した。

Linuxの現在の開発ステータス

Hohndel:あなたを改めて紹介する必要はないと思いますが、ご自身で自己紹介するときはどうされていますか。

Torvalds:普段の生活では凝った自己紹介はしません。みんなの注目をLinuxに集めるようなことはしたくないので「Linusです」とだけ名乗っています。「終身の独裁者」※などと名乗ることはありません。家にいるときは普通の生活を送っています。

※Linuxコミュニティでは、カーネルのサブシステムごとにメンテナーを置いているものの、リリースに取り入れるかどうかの最終決定権はTorvalds氏に委ねられている。そのため、Torvalds氏は「Linuxの独裁者」と形容されることもある。

Hohndel:今日のトピックは「Linux:どこに向かっているのか」ですが、その前に今、われわれはどこにいるのでしょうか。現在の開発ステータスについてお聞かせください。


Linus Torvalds氏

Torvalds:この数年、(常に新しい機能が追加されているにもかかわらず)非常に安定しています。これは8~10週間ごとのリリースサイクルを採用したことによるものです。

 この開発サイクルには、「次のリリースにはこの機能を必ず入れる」といったプランはありません。その時点で準備ができている機能を盛り込んでリリースを出します。準備ができていなければ、その機能は次のリリースに回されます。

 カーネルのコアは非常に安定しているので、ほとんどの努力は、ハードウェア関連の部分です。新しいデバイスのドライバやCPUのサポートに労力を傾けています。

 特に現在は、ARMアーキテクチャのサポートの改善が進められています。2年くらい前まではARMのサポートはあまりいい状態ではありませんでしたが、今はかなり良くなっています。

Hohndel:これはあまり喜ぶべきことではないかもしれませんが、コードの量が常に増え続けていて、変化のスピードもどんどん速くなっています。マージウィンドウ(1回のリリースで取り込める機能の枠)が飽和してしまいませんか。

Torvalds:新しいリリースの規模が常に過去最大になるのは、驚くべきことではありません。8~10週間のリリースサイクルを崩したくはありませんが、コードの量や変化のスピード自体が問題ではないのです。問題は、あまりテストされていないコードが紛れ込んできて、リリースを出したあとで変更を加える事態になることです。

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