ソーシャルレンディングがアメリカで始まった時に面白いと感じたのは、お金を借りたい個人がその生活振りを写真入りで赤裸々に語り、いかに自分が頑張っているのか、なんでお金が必要なのか、そして、何故それを返済できるのかをネット上でプレゼンテーションするところだ。そして、貸し手はそれを見て、単なる金利収入のためだけではなく、感情的な共感によって個人の「おカネ」を拠出するところであった。
また、Bloomberg誌によると、AirBnBの利用者の中には宿泊代の節約だけではなく、宿泊先のホストとのコミュニケーションを利用目的の一つに挙げている人たちがいる。そして、DogVacayの提供しているのは、単なる廉価な犬用の宿泊施設ではなく、犬好きの人々のコミュニティである。
シェアリングエコノミーはネット上のプラットフォームで実現する。しかし、そこで個人の感情やコミュニケーションが重要な要素を占めるのは、シェアリングエコノミーの主役がプラットフォーム事業者ではなく、そこでマッチングされる個人と個人であるからだ。つまり、シェアリングエコノミーには、個人の資産の有効活用という経済的な側面以外に、個人と個人の結び付きやコミュニケーションを活発化する副次的な効果があるということだ。
社会問題を解決する手段としてのシェアリングエコノミー
シェアリングエコノミーは、リーマンショック以降の節約志向の中で、その規模が急速に拡大したと言われている。そして、その領域は「おカネ」から「モノ」「サービス」へと広がりつつある。
しかしながら、その面白さはビジネスモデルや経済的な価値にとどまらず、人と人との直接的なコミュニケーションという、失われつつある社会的な絆の復活に寄与するところにある。ヒトの孤立化が進む先進国においてシェアリングエコノミーを社会問題の解決という視点で捉えると、まだまだ面白い仕掛けができるのではないだろうか。
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飯田哲夫(Tetsuo Iida)
電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。