さらにクラウドコンピューティングでは、仮想化技術によるサーバ統合を実施するため、サーバ台数が減少する。サーバ台数の減少は保守対象の減少となるため、保守サービスへの需要減退につながる。
このように厳しい状況にある「オンサイトハードウェア保守市場」だが、米国などと比較すると、日本では、まだ保守ベンダーの数は多いといわれている。日本では、メーカー系の保守ベンダーが多いため、競合同士での合併や提携は起こりにくいといわれているが、このまま保守サービス市場の縮小が続けば、業界再編を進めざるを得なくなってくると予想する。
具体的には、保守ベンダーと特定分野に強みのある運用ベンダーやシステムインテグレーター、データセンター事業者などとの合併や提携が進むのではないだろうか。保守ベンダーは、多くの保守要員を抱えているため、提携や合併先としても魅力的であり、競合以外との合併や提携が実現する可能性は十分にある。
また、グループ企業内での再編が起こる可能性もある。今後、保守ベンダーが保守サービス市場の縮小に対応し、周辺領域にサービスを拡大させていけば、グループ内の他企業との間でカニバリゼーションが起きると想定される。そのような事態を解決するため、グループ内で再編が行われる可能性があり、その際にグループに依存した経営を脱却できていなければ、保守ベンダーは吸収されて会社自体がなくなってしまうことも考えられる。
このような再編の可能性をにらみ、保守ベンダーは自ら、上流工程に強みのあるシステムインテグレーターや運用工程に強みのあるデータセンター事業者など、自社サービスの周辺領域の有力事業者との提携・合併を検討していくべきと考える。上流工程であるシステムの企画、設計、構築、ハードウェアの導入などに積極的にかかわっていくことで、保守サービスの受注増につながる可能性が高いためである。
また、震災以降、事業継続需要が高まっているため、データセンター事業者と連携することで、新たな需要を取り込んでいける可能性も高い。
保守サービス市場では、ハードウェア保守サービス市場の縮小が続いているため、今後業界再編が進む可能性がある。そのような展開をにらみ、保守ベンダーは、保守分野だけではなく、他分野の事業者との提携や合併も視野に入れた生き残り戦略を模索していくべきである。
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- 石塚俊
- 株式会社矢野経済研究所 情報通信・金融事業部(YanoICT)主任研究員