アナリストの視点

キラーコンテンツはバイタルデータ、2016年に1億台--スマートウォッチの未来

賀川 勝(矢野経済研究所)

2014-01-07 07:30

ウェアラブルデバイス市場概況

 スマートフォンの2013年出荷台数は10億台を超え、メーカー間の競争は先進国から新興国にシフトした。また、市場拡大に伴い製品単価が下落し、現在は200ドル以下の低価格機に注目が集まっている。中でも中国やインドの新興メーカーが低価格帯スマートフォンで急成長を遂げており、既存メーカーを脅かしかねない状況となっている。

 既存メーカーは差別化を図るべく製品ラインアップを拡大させると同時に、周辺機器などのアクセサリを充実させる一方で、「ポストスマートフォン」となるデバイスを模索している。本命として注目されているのが「ウェアラブルデバイス」である。

 ウェアラブルデバイスが注目された背景にはスマートフォン市場の拡大に伴い、半導体技術が発達し、無線部品やセンサの小型化が実現したのと同時に、低消費電力化、低価格化が進んだこと、スマートフォン、タブレットと「連携」させることで新しいビジネスを生み出す可能性を持っていることが挙げられる。

 具体的にはウェアラブルデバイスは、搭載したセンサを通じて体温、血圧、脈拍などのバイタルデータの取得が可能である。ウェアラブルデバイスとスマートフォンと連携させることで、クラウドのサービス上に個人のバイタルデータを蓄積してセルフケアに役立てたり、ヘルスケアサービスの提供を受けたりすることが可能となる。高齢化が進む現在、消費者の健康や医療への関心が高まっていることも後押ししている。

 スマートフォンと連携するウェアラブルデバイスとして「腕輪型端末」や「指輪型端末」に加え、「スマートグラス」に代表される「眼鏡型端末」などが製品化されている。そんな中、デザイン、実用性、価格、装着性などの面で最も有望視されているのが「スマートウォッチ」である。(矢野経済研究所 2013年版 スマートフォン連携サービス・機器市場展望

スマートウォッチの概要

 スマートウォッチは時計型コンピュータの総称で、単独もしくはスマートフォンとの連携によってインターネットにアクセスして情報を収集、表示することが可能な製品と定義される。

 スマートウォッチは、スマートフォンの純正アクセサリとして、以前より製品化され、時計表示に加え、天気、スケジュール、メール着信、SNS連携機能を搭載している。スマートウォッチは大手スマートフォンメーカーをはじめ、大手電機メーカー、IT機器メーカー、時計メーカー、スポーツ用品メーカーが製品化している。2013年末時点ではスマートウォッチにカテゴライズされる製品は、約100アイテムが存在する。

 2014年以降、市場に導入される製品は飛躍的に増加し、本格的な立ち上がりが期待されている。2013年10月に、Samsungの「GALAXY GEAR」が、日本をはじめとする世界市場で発売され、同社の最新型スマートフォン「GALAXY Note3」と連携する周辺機器として扱われて、大きな話題となった。

さまざまなメーカーがスマートウォッチの開発を手掛けている
さまざまなメーカーがスマートウォッチの開発を手掛けている

スマートウォッチの市場規模

 2012年以前のスマートウォッチ製品はカシオ計算機「G-SHOCK」製品、ソニー(ソニーモバイル)、米モトローラなどの携帯電話端末メーカーがスマートフォンの周辺アクセサリとして導入した製品に加え、台湾のPeble、イタリアのi'm Watchなどのベンチャー企業の製品が導入されている。2012年のスマートウォッチ市場規模は95万台に過ぎなかった。

 2013年はソニーが新製品「SmartWatch 2」を導入したのに続き、SamsungがGALAXY Gearを導入した。また、スポーツ用品メーカーの米Nike、ドイツのAdidasなどがスマートウォッチを導入しており、市場の関心を集めた。2013年のスマートウォッチ出荷台数として、1000万台が見込まれている。

 2014年以降もスマートフォンを手掛けるメーカーを中心にスマートウォッチの導入が相次ぐ見通しで、中国のZTE(中興通迅)などがスマートウォッチを発表しているほか、米Appleの参入が見込まれている。「iPhone」「iPad」で優れたプロダクトデザインとビジネスモデルで市場を魅了してきただけに、同社の参入が実現すれば、スマートウォッチ市場の拡大の起爆剤となる可能性が高い。

 スマートウォッチはさまざまな産業からの新規参入が期待されている。具体的にはPCメーカー、家電メーカー、時計メーカー、スポーツ用品メーカー、アパレルメーカーなどが挙げられ、これらの業界企業の参入が見込まれる2016年における市場規模は1億台に達すると予測した。

図表1 矢野経済研究所推計
図表1 矢野経済研究所推計

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