VMWorld

ネットワーク仮想化のユーザーニーズは強い--アナリストに聞く「VMworld 2013」

怒賀新也 (編集部)

2013-08-29 11:05

 10週年を向けた「VMworld 2013」。今回、ネットワークとストレージ領域をも仮想化するための基盤として紹介した「VMware NSX」「VMware Virtual SAN」に加え、サーバ仮想化基盤であるvSphereでプライベートクラウドを構築できるソフトウェアスイート「VMware vCloud Suite 5.5」も発表した。

 vCloud Suite 5.5では、サーバ内蔵のフラッシュを仮想化し、アプリケーションの遅延を削減する「VMware vSphere Flash Read Cache」を新たに搭載。従来版と比較して2倍の物理CPU、メモリ、NUMAノードをサポートできるようにした。さらに「VMware vSphere Big Data Extensions」により、「VMware vSphere 5.5」上でApache Hadoopやビッグデータのワークロードをその他のアプリケーションと同時に稼働できるようになった。CPUとしてIntelのXeon E5 v2とAtomプロセッサC2000をサポートすることも明らかにしている。

 パブリッククラウド「vCloud Hybrid Service」の一般提供も発表している。サーバとネットワーク、さらにデスクトップ領域も仮想化による効率化というキーワードで押さえた同社の戦略は、今後の新たな拡大路線を予感させる。ネットワークを中心としたインフラ領域を巻き込んだ業界再編が起きるとの声もある。

VMworld 2013における主な発表
VMworld 2013における主な発表

ユーザーの関心事は仮想化の次

 VMwareの今後をアナリストはどう見ているのか。ITRのリサーチ統括ディレクター/シニアアナリストの生熊清司氏を中心に、米Constellation ResearchのHolger Muller氏と、同社の最高経営責任者(CEO)であるプリンシパルアナリストのRay Wang氏に話を聞いた。

ZDNet VMWorld 2013に参加してどんな印象を持ちましたか。VMwareの製品戦略についての考察を教えてください。

生熊 まず、(サンフランシスコ中心にある大規模なコンベンションセンターである)Moscone Centerの全体を使い、参加者が2万3000人に上ったことに気づきました。VMworldが10回目の節目を迎え、VMwareという企業がIT業界での地位を確立した裏付けと言えるでしょう。

リサーチ統括ディレクター/シニアアナリストの生熊清司氏
リサーチ統括ディレクター/シニアアナリストの生熊清司氏

 日本でも、サーバ仮想化の領域でヴイエムウェアは存在感があります。製造業や建設業をはじめ、一部上場企業を中心とした大企業が多いITRの顧客の多くが仮想化基盤にVMwareのソフトウェアを採用し、製品への信頼も厚いと感じています。

 仮想化市場で、多くのユーザーの関心事は「仮想化の次のインフラ」です。サーバ仮想化を進める企業は多く、次はどうするかと考えているわけです。

 今回VMwareが、従来のサーバ領域に加え、これまで手つかずだったネットワークをNSXで、さらにストレージの仮想化にもVirtual SANで正式に乗り出したことについて、ユーザーニーズに合致した戦略だと考えます。サーバ領域だけではインフラの効率化は完結しないからです。サーバ仮想化の市場は縮小傾向にあるので、ビジネス拡大の機会になるでしょう。

 NSXでは、ネットワーク、ルータ、スイッチ、ネットワークアプライアンス製品を提供する企業と競合する可能性が考えられます。(仮想化基盤である)ESXのユーザーがNSXを導入すると、1つの管理コンソールから、CPUとネットワーク、ストレージを一元的に管理できるようになり、これは大きなインパクトがあるでしょう。その意味で、VMwareは、ソフトウェアベンダーとは協業しやすいものの、ハードウェアベンダーとは組みづらくなるかもしれません。新たなアーキテクチャで、ベンダー間の「エコシステム」をどうしていくのかを考えるのも、VMwareのチャレンジかもしれません。

 一方、クラウドの分野で、パブリックとプライベートを組み合わせて使うハイブリッドクラウドについては、米国と日本ではユーザーの意識に差があります。日本では、電子メールやグループウェアなどの情報系システムは外に出してもいいが、基幹系は嫌がる傾向があるのです。

 災害時などに備えたバックアップサイトのことは考えているが、オンプレミスの環境をそのまま出す先が意外とないのです。Salesforce.comでは不可能ですし、AWS(Amazon Web Services)かというと、それもイメージが違う場合が多い。つまり、ピーク時に合わせて、パブリックのクラウドを自由に使いこなすというところまでは、日本のユーザー企業の意識はまだ追いついていないと言えます。

 米国資本の場合、(米国政府の要請で保存データを開示する規定がある)「愛国者法」を気にする企業は多い。そのため、VMware自身がハイブリッドクラウドの基盤を出していますが、日本でやるなら日本のデータセンターを利用できる企業とのパートナーシップが必要になると考えます。VMwareがパブリッククラウドサービスを開始するにしても、(米国のデータセンターを利用する前提だと)日本では難しいかもしれません。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    従来型のセキュリティでは太刀打ちできない「生成AIによるサイバー攻撃」撃退法のススメ

  2. セキュリティ

    マンガでわかる脆弱性“診断”と脆弱性“管理”の違い--セキュリティ体制の強化に脆弱性管理ツールの活用

  3. セキュリティ

    クラウドセキュリティ管理導入による投資収益率(ROI)は264%--米フォレスター調査レポート

  4. クラウドコンピューティング

    生成 AI リスクにも対応、調査から考察する Web ブラウザを主体としたゼロトラストセキュリティ

  5. セキュリティ

    情報セキュリティに対する懸念を解消、「ISMS認証」取得の検討から審査当日までのTo Doリスト

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]