経営戦略から見たビッグデータの核心

ビッグデータがもたらすスピード経営 - (page 3)

辻 大志(バーチャレクス・コンサルティング)

2013-09-05 07:30

「マザーセンター制」という考え方

 こうしたマザー工場の考え方を生かすことはできないか。ビッグデータから短サイクルで得られる示唆や仮説をすべての業務ラインに同時に速やかに展開することは困難であり、リスクを伴う。そこで、「マザーセンター」で示唆・仮説の検証、新プロセスの確立・熟成などを速やかに行い、方法や手順を具体化した上で、それ以外の拠点やラインに速やかに展開していく。すなわち、マザーセンターが文字通り母胎となって、新しいものを産み出し、伝播していく役割を担う。

 これは、企業内の支店、事務センター、コンタクトセンターなどの物理的に複数カ所に分離設置されている拠点の場合だけでなく、論理的な業務構成単位でとらえられる場合でも有効に活用することができる。マザーセンター制により、“経営判断や意思決定を迅速に企業活動へ反映できる仕組み”の素地は作れるのではなかろうか。


マザーセンターの概要と効果

 もう1つの“自らが判断や決定を下し、自律的にサイクルを運営できる仕組み”は、マザーセンターが有すべき機能と権限に依るところが大きい。自律的に判断や決定を下すことができるデータや情報、それを分析する機能が必要であり、そこから得られたものを自律的に導入・展開できる権限が必要である。特に、後者については、企業全体が意識を変え、制度やルールを変えなければならない場合もあるため、十分に留意する必要がある。

 以前、企業のTwitterアカウントでのつぶやき内容を稟議に掛け、何人もの承認を取っている企業の話を聞いたことがあるが、お笑い沙汰だ。こうした企業では、いくらマザーセンターに自律的な判断と運営を求めたとしても、まったく機能しないばかりか、ビッグデータに対する投資が無駄になり、大きな機会損失を招くことになってしまう。

 なお、マザーセンターの機能を自社のみで確立することが難しい場合もある。その場合には、外部の専門家や有識者との混成組織とし、段階的に自社化を進めていくことが賢明である。外部リソースに対しては、単なるアドバイザーやコメンテーターのような役割を与えるのではなく、マザーセンター配属の自社社員とともに、短サイクルでの変革とその成果が求められる役割を担わせることが肝要である。

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