三国大洋のスクラップブック

アップルが打った将来への布石--64ビットチップ導入の戦略的意味

三国大洋

2013-09-25 13:02

 今回も前回に続いて新型iPhoneの話――iPhone 5sに導入された64ビットプロセッサ(SoC)「A7」が、Android陣営に内在する構造的な問題である「OSフラグメンテーション」にダメ押しする楔(くさび)の役割を果たす「数年後に向けた布石」ではないかという話を記す。

 米国時間23日に「新型iPhone 2機種の発売3日間の販売台数があわせて900万台超に達した」という発表がAppleからあった。昨年のiPhone 5の時が500万台超、その前のiPhone 4Sの時が400万台超だから、2機種同時投入や発売第一陣に中国市場が加わったことなどを加味しても、大幅な増加であることはほぼ間違いない。強気のAppleウォッチャーとして知られるアナリストのGene Munsterあたりから、「今回は500万~600万台くらいではないか」というかなり慎重な予想が出されていたので、この前年比1.8倍というのは良い意味で意外な数字かも知れない。

 一方20~21日あたりには、「iPhone 5sの、特にゴールドとシルバーのモデルが世界各地でさっそく売り切れ」といったニュースも、WSJやBloomberg、あるいはテクノロジ系のブログなどで流れていた。アーリーアダプターがしっかり上位機種、それも新しいものから買っていく、というのが今回も確認できたと言えようが、一方でボリュームゾーン目掛けて投入されたはずのiPhone 5cについては勢いがいまひとつ、というような話も出ている。Localysticsという調査会社からは「5sが3.4に対して、5cが1」という推定も出ている。

iPhone 5s Outsells 5c by a Factor of 3.4x in the United States Opening Weekend

 ただし9月20日からテレビでさっそく流れているiPhone 5cのコマーシャルを目にした家族(いずれも女子)が「カワイイ」「イエローで決まりかな?」と口々に言い合っていたりするのを目にすると、Apple Storeに行列するようなアーリーアダプターと、マジョリティとの反応の違いが数字に表れるのはいつごろか……などといった疑問も浮かんでいる。

 それはさておき。

 9月20日の全世界発売に先立って、米国時間18日には一部のテクノロジ系記者やブロガーらが書いたレビュー記事の第一陣が出揃った。これらの記事の一部に目を通して印象に残ったのは、特に上位機種であるiPhone 5sに対する評価の高さで、64ビットSoCのA7の採用や、指紋認証「Touch ID」の感度の良さなどをほめる声が目立った。今年は「Sアップデート」(マイナーアップデート。本体の外側は変えずに、中味だけをグレードアップする)の年でもあり、昨年のiPhone 5の時の「LTE対応」といった大きな目玉は不在、そのため10日の発表を目にして正直あまり期待していなかった――「変化があったとしても漸進的(incremental、もしくはevolutionary)なもので、使い手にとって大きな違いをもたらすような質的変化(revolutionaryなもの)はないだろう」くらいにしか思っていなかったが、いくつかのレビュー記事の説明を読んで、そんな考えを改めた次第。

 5sについてAppleが「これまでで最も将来を見据えた(most forward-looking)」iPhoneと称していることは周知の通りで、これは裏を返せば「いますぐ大きく変化をもたらす」部分が少ないと解釈することも可能だろうが、それでも今後の展開を想像するためのヒントとしては実に面白いもの、とも思えている。

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