プライベートクラウドとパブリッククラウドのどちらを採用すべきか、あるいはその組み合わせであるハイブリッドで行くべきかは、ITアーキテクトの間で盛んに議論されている問題で、判断が難しいとされている。 そして、最適な答えは個々の組織の状況によって異なると言われている。しかし実際には、議論の余地などない(少なくとも、あるべきではない)。
プライベートクラウドは、非効率なのだ。プライベートクラウドは、望ましくない過剰な設備投資を前提としたモデルで作られている。実際、プライベートクラウドから十分な恩恵(十分な弾力性)を受けるには、過剰な設備投資をするしかない。一方、パブリッククラウドは、ほとんどの企業に対して、広く適用可能であり、高い価値を提供できる。
以下では、パブリッククラウド以外を選択すべきでない理由を挙げていこう。
1. 規制への対応の必要性。セキュリティ関連、およびプライバシー関連の規制や監査は、IT業界よりも遅れているが、そのルールを順守するのは難しい場合もある。われわれは米国で、一般的な規制の要件や、HIPAA(米国の医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)、SOX法、米国防省の標準などで必要とされるセキュリティを備えたパブリッククラウドを利用することで、監査の要求に応えた顧客を知っている。パブリッククラウドを利用したアーキテクチャの利点を証明した形だ。これをプライベートクラウドで実現しようとすれば、組織内で必要なデータ保護の措置には、組織内SLAと組織内のコンプライアンスチェックリストが必要となり、しかもこれらは頻繁に見直す必要があるため、コストは上昇し、インフラは複雑になる。
2. 新興企業にはパブリッククラウドが必要。新興企業は、要件が定まらない発展段階にあることが多い。そのような企業では、日々、何が必要になるか分からない。そして、製品を世に出すまでの時間的制約が厳しい場合もある。こういった状況では、ものの数分でリソースの増減の設定や追加ができる、Amazon Web Services(AWS)のようなパブリッククラウドを利用する方が有利だ。社内でも小規模なインフラは持つかもしれないが、大部分はパブリッククラウドを利用するべきだ。