CIOはCEOにもっと技術を提案するべき--P&Gのパッセリーニ氏 - (page 2)

齋藤公二 (インサイト)

2013-12-02 15:28

CIOは今こそ動くとき--P&G CIO Filippo Passerini氏

 実際のCIOの声としては、P&GのCIO、Filippo Passerini氏がインタビュービデオの形式で登場。「P&G流 グローバルIT戦略~価値を生み出し続ける組織のあり方~」と題し、P&Gの取り組みやCIOの役割などを語った。

 Passerini氏は2004年からCIOを務め、IT部門の組織変革や2005年Gillette買収におけるシステム統合を指揮したことで知られる。そうした取り組みにおいては、ERPが重要な役割を果たしたという。

 「ERPはピラミッドの土台のようなものだ。ERPは標準化の中心であり、ビジネスモデルを推進する上では、サプライチェーン、営業、マーケティング、財務などを包含するシステムが不可欠になる。例えば、Gilletteの統合ではP&Gのシステム基盤に組み込むことで、コストを削減し、事業に相乗効果をもたらした。ERPの価値は以前にも増して重要になってきている」(同氏)

P&GのCIO、Filippo Passerini氏
P&GのCIO、Filippo Passerini氏

 バックオフィス業務を実行する上で重要なことは、いかにしてビジネス的な価値を結びつけるかだという。P&GのIT部門のユニークな施策としては、消費財メーカーである同社が消費者向けに展開しているコミュニケーションやサポートの在り方を、IT部門とビジネス部門とのやりとりにも応用していることがある。

 「IT組織の中にコミュニケーション部を設置し、消費者と同じようにコミュニケーションを取っている。これは世界的にもユニークな取り組み」だという。

 ビジネス価値を重視することは、新しいテクノロジの選択にも関わる。例えば、クラウド、SNS、ビッグデータといった技術を採用する際も、ビジネス的な価値や目的をスタート地点におき、価値、ゴール、費用から必要な1つ1つのステップを踏み、導入を決める。「単に新しいからといってそれに夢中になる必要はない。新しいだけで導入を決めると、ビジネス効果のないITを作り上げることになってしまう」(同氏)

 もっとも、「2、3年に一度は、新しい技術で"博打を打つ"」という。今後の世界に影響しそうなテクノロジを、社会、経済、人口動態などを踏まえて分析し、ITの視点からそのテクノロジがビジネスをどう変えるのかを考えるという。そうしたケースで同社が取り組んだのが、パッケージ見本や消費者テストのバーチャル化だ。

消費者テストのバーチャル化

 具体的には、これまでは、新商品を開発する際には、ラベル、色、大きさなどを変えた商品の模型を複数つくり、それを使って6~7週間かけて消費者テストをし、商品化していた。そのプロセスについて、模型をバーチャル化し、それを使って商品テストをするようにした。

 また、商品の陳列棚についても「Cave」という仮想空間を作り、消費者がCave内でショッピングし、そのフィードバックが得られるようにした。これにより、それまで数週間かかっていたテストの結果が数分で得られるようになったという。

 「ITをあくまでツールとして考え、何ができるのか、ビジネスをどう変えるのかを考える。それを踏まえて新しいアイデアや技術に投資することが大切だ」(同氏)

 また、グローバルシテスムの在り方については、全体最適と個別最適は9:1の割合を目安にしているという。「標準化されたシステムは重要だが、その土地の法制度やマーケティング方法などローカルな条件はその土地に合わせる必要がある。ERPについて、少なくとも同じマーケットについては標準化したほうが効果的だ」とした。

 日本のCIO向けには「CIOという役割が確立していないことは、むしろ率先して利用した企業に競争優位というチャンスがもたらされる」とアドバイスした。

 「想像以上にITの適用範囲は広がっている。ビジネスのすべての領域で、業務の効率化を推進できる。ITの可能性を信じ、CIOが率先してCEOに技術の提案をするべきだ。今こそ動くときだ」(同氏)

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