シスコシステムズは3月5日、買収したSourcefireの製品を統合したマルウェア対策製品の新ラインアップ「Advanced Malware Protection (AMP) Everywhere」を発表した。
シスコが「IronPort」ブランドで展開してきたセキュリティアプライアンスなどに、Sourcefireが展開してきた次世代の不正侵入防止システム(IPS)などを加え、これらからマルウェア検知ソフトの「FireAMP」を利用できるようにした。買収したCognitive Securityの脅威予測技術「Cognitive Threat Analytics」も統合した。標的型攻撃などの高度なサイバー攻撃に対して、攻撃前から攻撃後までの全体にわたって継続的な分析と脅威対策を提供するという。
AMP Everywhereを構成するのは、これまで提供していた「Web Security Appliance」「Email Security Appliance」「Cloud Web Security」「Hosted Email Security」、Sourcefireの次世代IPS「NGIPS」や次世代ファイアウォール「NGFW」、クライアント向けエージェントソフト、管理アプライアンス「Dedicatef Appliance」、FireAMPの機能を拡充した分析ソフトAMPなど。大きな特徴は、サイバー攻撃がいつどこで起きたのか、どういった経路で感染が広がったのか、潜在的な脅威がどこにあるのかを時系列で可視化できるという。
Cisco Systems クラウドセキュリティ&スレットインテリジェンス プロダクトマネジメント担当シニアディレクタ Raja Patel氏
Cisco Systemsのクラウドセキュリティ&スレットインテリジェンス プロダクトマネジメント担当シニアディレクタのRaja Patel氏は今回発表したラインアップの意義をこうアピールした。
「ネットワーク全体にわたり、攻撃プロセスを常に監視し、時間を遡って分析する“レトロスペクティブ(遡及的)”なセキュリティを提供する。一連の攻撃の流れを通した包括的なマルウェア対策であり、エンドポイントからネットワーク、仮想環境、クラウドまで業界で最も広いカバレージがある。こうした製品を提供できるのはCiscoだけだ」
具体的には、クライアントにエージェントをインストールし、個々のクライアント上でのマルウェアを検知し、遡及的に分析するクラウドベースのサービスや、アプライアンスの「FirePOWER」などを追加で設置してネットワーク全体にわたってマルウェアがどういった経路で感染したかを可視化できるという。
前者の場合、個々のクライアントごとのプロセスがリスト化され、横軸に、そのプロセスがいつ作成され、何を行ったかを時系列で表示する。画面をスクロールさせることで、過去に遡ってマルウェアの挙動を追跡できる。
後者の場合、クライアントのIPアドレスがリスト化され、横軸にマルウェアがどのIPアドレスに感染を広げていったかなどを時系列で表示する。クライアントごとの表示と同様に、画面をスクロールさせることで過去に遡ってマルウェアの感染経路を追跡できる。
Cisco Systems セキュリティエンジニアリング Sourcefire アジア太平洋地域統括テクニカルディレクタ Dean Frye氏
Cisco Systems セキュリティエンジニアリング Sourcefire アジア太平洋地域統括テクニカルディレクタのDean Frye氏が、ネットワークとエンドポイントの両方について、マルウェアの侵入ルートや感染の広がりを可視化できることを実演してみせた。
AMPの機能としては、ウェブフィルタリング、ウェブレピュテーション、マルウェアシグネチャ、ファイルレピュテーション、ファイルのサンドボックス上での解析、ファイルレトロスペクション(遡及機能)、Cognitive Threat Analyticsなどが提供される。
シスコは同日、新アプライアンス「FirePOWER 8300」シリーズとセキュリティ人材を育成するための「シスコ サイバーレンジサービス」も発表した。FirePOWER 8300は、次世代IPSの最上位機種であり、2Uから8Uまでがあり、IPSスループットは15Gbpsから60Gbpsまで。6月から販売する。
サイバーレンジサービスは、セキュリティ対策の専門家育成トレーニングで、サイバー攻撃を仕掛ける攻撃者との模擬戦環境を提供する。最先端のセキュリティ手法、オペレーション、プロセスをもとに世界中どこからでもアクセスできる環境を提供し、サイバー攻撃に対応する能力を養成する。攻撃ケース数は44、100を超えるアプリケーション、200~500の異なるマルウェアタイプをシュミレーションできるという。4月から販売する。
会見では、Sourcefireが開発に関わってきたオープンソースの不正侵入検知システム(IDS)「Snort」向けにアプリケーション可視化機能などを提供する検知言語「OpenAppID」も紹介した。米国で2月25日に発表したもので、オープンソースによるアプリケーション可視化機能は初だとしている。
OpenAppIDで独自のアプリケーション検出プログラムの作成、共有、実装が可能となり、アプリケーションによる脅威にいち早く対応できるという。コミュニティが開発した検出プログラムは、シスコの製品にも反映していくとしている。