アプリケーション戦略はビジネス戦略に従って「違いを作ってつなげる」

齋藤公二 (インサイト)

2014-03-11 14:29

 ガートナー ジャパンは3月10~11日、アプリケーション戦略やエンタープライズアーキテクチャ(EA)をテーマとした自社イベント「エンタプライズ・アプリケーション&アーキテクチャ サミット 2014」を開催。初日の基調講演には、リサーチディレクターの本好宏次氏と米GartnerのバイスプレジデントのDennis Gaughan氏が登壇し、クラウドやソーシャル、アナリティクスといった新しいITトレンドの中で、企業はどのようなアプリケーション戦略を策定し実行していくべきかについて提言した。

柔と剛の組み合わせが重要

 イベントは本好氏の基調講演「俊敏な経営を支える『骨太』のアプリケーション戦略を策定せよ」で幕を開けた。ここでいう“骨太”なアプリケーション戦略とは、俊敏な経営を支える上で“ブレない軸”を持っていること。本好氏は講演冒頭、それを示すものとして東京スカイツリーと五重塔の“心柱”を例に上げて説明した。

本好宏次氏
ガートナー ジャパン リサーチディレクター 本好宏次氏

 スカイツリーも五重塔も、土台から頂点までを一本の心柱が支える構造になっている。スカイツリーを設計するときに五重塔を参考にしたのでなく、最新の制震システムを研究したところ、あの形に行き着いたと言われる。

 「下の土台は非常に固いつくりであるのに対し、上の屋根などは緩やかにつながる構造だ。いわば柔と剛を組み合わせた構造物であり、それにより、長らく地震に耐えることができる。環境変化に応じてしなやかに対応できる構造物だ」(本好氏)

 グローバル競争の激化やコンシューマー化に代表される先進的な技術の登場などで、業務アプリケーションは変革圧力にさらされている。不確実性が高まり、変化に俊敏に対応していくことが求められるようになった。そうした中で業務アプリケーションの戦略にも「柔」と「剛」を組み合わせた構造が求められるようになってきたという。

 「ブレない軸を作り、柔と剛を両立させることは本当に難しい課題。従来通りの安定運用を維持しつつ、迅速な差別化と革新をもたらすという相反する要求をうまくバランスさせなければならない。それができた企業が、他社とくらべて一歩進んだ取り組みを打ち出していけるのではないか」(同氏)

 その上で、本好氏はガートナーによる「アプリケーション戦略」の定義として「ビジネス戦略とその実現に必要なプロセスやスキルを支援するアプリケーションポートフォリオを発展させるための計画」だと紹介。これは簡単に言えば「違いをつくって、つなげる」ことだ。

 違いをつくるというのは、他社との違いを見出すことだが、違うだけでは真似されてしまう。そこで違いをつなげて価値を生み出していく。もともとは、『ストーリーとしての競争戦略』の著者、一橋大学大学院教授の楠木建氏のコンセプトだ(同氏はゲスト基調講演にも登壇)。

 「アプリケーション戦略では、アプリケーションポートフォリオを単に寄せ集めるだけでなく、最適な形でつなげることがキモになる。ビジネス戦略に従って、つなげることで価値を見出していくことが重要だ」(同氏)

 具体的には、アプリケーション戦略を構築するための4つのインプットとして、今のアプリケーションがどうなっているかという「アプリケーションポートフォリオ」、変化するITトレンドを受けて調達のあり方などを決める「アプリケーション原則」、アプリケーションを作るための「プロジェクトポートフォリオ」、他社との違いをつくりだす「ビジネス戦略」があることを説明。それぞれを具体的に解説した上でアプリケーション戦略を継続的なサイクルとして回していくことがポイントだとした。

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