同社のヘルスケア事業の成長で中核的な役割を担う未来医療開発センターは、国民の健康寿命延命に向けて健康増進、重症化予防、疾患の早期発見、新薬創出、個別化医療などの実現にICTの利活用を検討し、最先端の研究機関と現場密着型で事業を開発していく。
新技術の研究開発機能を統合し、スピード強化を図り、今後の診断サービス、機器ビジネスの拡大を狙う。大学医学部などの研究機関や製薬企業、治験実施機関、医療機器ベンダーなどとの社外連携や協業も推進するという。「富士通が各部門で取り組んできたヘルスケアに関する研究を未来医療開発センターが取りまとめ、全体をコントロールしていくことになる」(合田氏)
同センターは、社内横断的組織と位置付けており、国家プロジェクトから創出される次世代医療情報システムビジネスの開拓、ゲノムなどのバイオバンクでの健康情報の活用、電子カルテ診療情報を統合した医療ビッグデータビジネスの創出、スパコンを活用した心臓シミュレータなどを活用したシミュレーションビジネスの企画・推進、IT創薬を目的とした化合物設計サービスの事業化推進、電子カルテなどをグローバルに展開していくという。
東京医科歯科大学大学院 難治疾患研究所 生命情報学 教授 田中博氏
東京医科歯科大学大学院 難治疾患研究所 生命情報学 教授 田中博氏は以下のように語り、未来医療開発センターの取り組みに期待を寄せた。
「未来医療開発センターの取り組みのひとつにゲノム医療があるが、研究分野でしか利用されていなかったシーケンサーを病院自らが導入し、臨床に活用するという動きが出ており、米国ではすでに20以上の医療施設で導入し、ゲノム医療が始まっている。原因未知の遺伝病や遺伝性がんの原因遺伝子の診断、薬剤代謝酵素の多型性診断などに活用され、電子カルテの中にもゲノム医療の情報が書き込まれている。ゲノム医療は、臨床情報と分子情報とを組み合わせた統合データベースによる情報基盤が必要となる。それを次世代ゲノム医療システムとして、富士通と共同で研究を進めている」