モノのインターネット、Internet of Things(IoT)に注目が集まっている。一方で、2020年に500億のデバイスがインターネットに接続されるとの試算があり、通信回線の限界やセキュリティ面の課題も併せて指摘されている。
ニフティは自社内に、「スマート家電」を配置したモデルルームを設置している
セキュリティイベントの「Black Hat 2013」では、カメラ機能付きの新型テレビを使って人々を監視できるようになったとの事例が紹介された。また、自動洗浄機能付きトイレがハッキングされ、遠隔操作でトイレの水を流したり、消音のための音楽が流れるようにしたりといった例も話題になったという。
テレビやトイレなど日常的に利用されているものがインターネットにつながることによる利点は、IoTで大きく取り上げられている。手元の端末から自宅の家電を操作できるようになる利便性のほか、水道の利用、カーテンの開け閉め、電気ポットの通電など、人々の日常的な行動を示すデータを蓄積し、高齢者の介護や子供の安全性確保に生かすといった取り組みが、今後ますます期待されてきている。
技術の進化とセキュリティリスクは常に表裏一体で存在している。監視カメラはハッキングされることで一転、さまざまな情報を漏らし、身の危険を招く仲介役になり得る――ニフティクのクラウド本部スマートプラットフォーム事業部スマートプラットフォームソリューション部の部長を務める竹内勝之氏は「家族の安全を確保するために導入したはずなのに、むしろ危険を招いてしまう」とその逆説的な状況について述べる。
「モノのインターネットの普及で、インターネットは今のインターネットではいられなくなる」(竹内氏)
ニフティクのクラウド本部 スマートプラットフォーム事業部 スマートプラットフォームソリューション部 部長を務める竹内勝之氏
具体的には、家庭のネットワーク環境の安全性に気を配るべきだと竹内氏は指摘する。さまざまな施策が考えられる中、インターネットサービスプロバイダ(ISP)として、ニフティは家庭にも仮想専用網(VPN)環境を手軽に利用できるようにするサービスを2013年10月から提供している。
サービス名は「スマートサーブ」で、L2でVPN環境を構築するもの。L2は、TCP/IPやHTTPよりも下であるため、TCP/IPなどのプロトコルで起きる事情を気にせずにVPN環境を構築できる。
従来、L2でVPNを構築する場合、1つの宅内LANに対して1つのシステムしか構築できず、コストがかさんでしまうため一般家庭用には向いていなかったという。今回、特許出願中だという新技術「パーソナルL2クラウド」により、複数の宅内LANとクラウド環境をつなぎ、1つのシステムで複数の家庭を管理するシステムの構築が可能になった。
税別の利用料金は初期費用5000円、月額基本料300円。コスト面の課題が解決しただけでなく、複数の家庭へのVPNサービス提供をネットワークで効率的に管理できるようになる。今後ニフティは、家電やAV機器、住宅設備、情報機器を提供する企業と連携してこの仕組みを展開する考えだ。
これらの企業が、複数宅内に接続されたLANに接続された機器のファームアップデートや遠隔メンテナンスのほか、センサ情報を活用した情報サービスなどを提供するためのプラットフォームとして発展させるとしている。
ISPが、IoTや、家庭内のエネルギー消費状況の管理や自動制御を実施する「HEMS」などにいかに取り組んでいくかは、企業だけでなく消費者を含めた今後のインターネットの活用法を占う動きにもなるため注目だ。