日立製作所は次期夏季五輪が東京で開催される2020年に設立100年を迎える。情報・通信システムをはじめ、電力、交通など社会インフラそのものを支える技術や製品、サービスなど幅広い事業領域を生かしたシナジーで競争優位性を築く。
モノのインターネット(Internet of Things:IoT)やM2M(Machine to Machine)を実現するための技術は、まさにこれらの社会インフラの状況を精密に捕捉することを可能にする。今後日立は多種多様な技術基盤をどう生かしていくのか。
急増するデータをインテリジェンスに
日立製作所 情報・通信システム社 スマート情報システム統括本部 戦略企画本部 本部長 香田克也氏
日立製作所 情報・通信システム社 スマート情報システム統括本部 戦略企画本部 本部長 香田克也氏は、電力、水、交通、教育、医療、さらには流通など社会インフラを形成する多岐にわたる要素を技術面で洗練させ、「人の安全、安心、快適をもたらすものとITを掛け合わせることが日立の掲げる理念」だと話す。
爆発的に増加し続けるデータを集約し、整理、可視化することで情報に変え、それを分析して付加価値のあるインテリジェンスに変換して提供するという。
社会インフラとなる製品を幅広く提供する同社にとって、設備の稼働状況などを把握し、保守、運用業務を最適化するのは重要な取り組みだ。さらに、人の動きも大きな要点と見て作業情報、顧客情報なども活用するとともに「現場の熟練者が持つノウハウ、これまで培われてきた、いわば匠の技をIT化することにより継承していくことが必要になる」(同)
このような発想を具体化するため、コンサルティング、サービス、製品などを日立として体系化したのが「Intelligent Operations」だ。農業、地域コミュニティ、エネルギー、施設管理、医療、製造、鉱山、モビリティ、小売りの9分野に対し、業種対応の付加価値サービスを用意する。
例えば、2013年10月にはSaaS型の機器ライフサイクル管理支援システム「Global e-Service on TWX-21」にM2Mの技術を盛り込んだ「Global e-Service on TWX-21/M2Mサービス」を開発。製造業者を対象に12月から受注を開始した。
Global e-Service on TWX-21は、機器の製造、販売、稼働や保守などの情報を収集、蓄積。それを共有し、活用して、機器のライフサイクルを管理する。これに、今回、収集した稼働情報の閲覧や異常な状況を知らせるアラーム、遠隔停止などの機能を拡充した。導入する企業は自社で新たにアプリケーションを開発せずに、M2Mを活用した機器のライフサイクル管理のシステムを構築できる。
稼働状況や位置などの情報とGlobal e-Service on TWX-21に蓄積した保守や稼働状況の情報などを組み合わせて分析した結果を生かし、顧客ニーズを反映した新製品の開発や保守作業の効率化、在庫の最適化など新たな価値を創出できるという。香田氏は「M2MはIoTでは、データを集めることに目が向きがちだが、集めたものを利用することまでを十分に考えておかないと、あまり意味はない」と話す。