この問いかけに対するBeaneの答えの中には「大金をはたいて(フリーエジェントになった)スター選手を獲得するくらいなら、その金を選手以外の人材補強に使った方がずっと効率的ではないか」といった考えも含まれている。そうしたアイデアが適切かどうか…。普段野球を見ない筆者には正直よくわからないが、Beaneの“モノのとらえ方”みたいなものが伝わってくる新鮮なアイデアとも感じられる。
***
この原稿を書きながら、Beaneのことをウェブを検索してみたら、WSJにあるCIO Journalのコーナーに「The Romance of Analytics」という記事が掲載されているのを見つけた。Billy BeaneとA'sのスカウト担当責任者に行ったインタビューの記事(シーズン開幕間近だから、いろんなところから引っ張りだこなのかもしれない)で、これを書いているのがThomas Davenport――Accenture在籍時代からIT&経営関連の著作を多数リリースし、現在はボストンカレッジの教授となっている研究者兼コンサルタント(2月下旬にリリースされた最新作のタイトルは「Big Data at Work: Dispelling the Myths, Uncovering the Opportunities」というらしい)。
このDavenportに加えて、今やちょっとした「時の人」となった感のあるNate Silver(『シグナル&ノイズ』著者)――「時の人」になっているのは、彼の「FiveThirtyEight」サイトが17日にESPN傘下で「新装開店」したため――、それにMalcom Gradwell(代表作の『ティッピング・ポイント』ほか著書多数)などが揃って参加したイベントが2月末から3月初めにかけてあった。
ABC US News | ABC Business News(ESPNと同じDisney傘下の放送局ABCの朝の番組に出演したNate Silver。「全米が熱狂する」とされる“March Madness”=NCAA大学バスケットボールトーナメントの勝敗予想で呼ばれたはずだが、ほかにもいろんなことを訊ねられている感じ)
「MIT Sloan Sports Analytics Conference」(SSAC)という、この集まりは、その名前から察しがつく通り、科学技術(MIT)と経営(主催者のSloan Schoolはビジネススクール)、それにスポーツと統計分析(Analytics)が交差するところをテーマにしたカンファレンス。2007年から毎年1回行われてきているが――過去には、Michael Lewisがモデレータ役を務めた「What Geeks Don't Get: The Limits of Moneyball」というセッションなどもあったようだ――、多分うまく時代の波に乗ったのだろう、ゲスト参加者の顔ぶれが回を重ねるごとに豪華になってきている。2014年あたりは「ビジネス(客寄せ)を意識しすぎて、もともとのテーマ――統計分析などをどうスポーツに役立てるか、という点がおろそかになってる」といった批判を一部で見かけたほどだ。