OPENMETIでも留意したのは客観性だという。データから何が読み取れるのかはさまざまな解釈がある。そのため、年報に多く出てきた“トレンドワード”や“輸出入額”“政策コスト”などの数字をビジュアライズし、過去の年表からたどるなど、まるでデータに直接触れられるようなインターフェースを実装、ユーザー参加型にした。
グラフにも“触れられる”
OPENMETI制作はライゾマティクス
今回、OPENMETIの制作はカンヌ国際クリエイティビティ・フェスティバルなどでPerfumeのパフォーマンスを手がけたクリエイター集団「ライゾマティクス」が担当した。税金でのプロジェクトのため一般競争入札を実施。企画の内容と提案金額などを評価して最終的にライゾマティクスが受託した。
2013年11月頃から、経済産業省大臣官房広報室では「オープンにしている情報の使いかた、見せ方を伝える」ことを目標に企画を開始した。「歴史を振り返りユーザーが参加できる」「ストーリーを感じながらファクトを見られる」などをテーマに、日本と世界経済の潮流の歴史を自然に見せることができる、頭の中でイメージしやすいなどを条件に今年に入って、公募を募った。過去の実績や、提案内容の新規性、創造性を点数化し審査したという。
ライゾマティクスの紹介動画(ライゾマティクス提供)
例えば、経済産業省の年報の中でトレンドとなったワードをOCR処理し、形態素解析した「トレンドワードAPI」や「政策コストの可視化」、「景気動向指数などの他のデータとの組み合わせ」などはライゾマティクスからのアイデアという。
アイデアのみならず、提案企画のクオリティや作業スピードも期待を超えた内容だったため、経産省の担当者が特別に「Supported by rhizomatiks」の文字をOPEN METIに入れ込んだほどだ。担当者は「社会的な意義を感じてもらっていた」と語り、提案金額は数百万という(文字のOCRは別予算)。制作期間は約1カ月だった。
OPENMETIの今後
OPENMETIは統計がわからなくても政府のデータを使ってみようという人を増やし、デザイナーやプログラマーといった異なる職務間、医療とITなど異業種間の情報の架け橋を目指している。
データを扱うユーザーはもちろん、デザインやプログラミングなどさまざまな分野で議論になれば例えば、「地域ごとの稲作の収穫量や農地の成分データをAPIで公開してほしい。天気データと組み合わせて生産量を上げるためのアプリが作れそう」など、要望に応える形でより大きくユーザーに貢献できる可能性がある。
「政府がデータをオープンにすることはやって当たり前。コミュニケーションなしでは政策は作れない。今後、オープンにしたデータを国民に見てもらえるよう、活用を促したい。OPENMETIは特に20~30代に興味を持ってもらい、経済産業省のサイトを見るきっかけになればうれしい。この取り組みを基に多くの議論が生まれ、さまざまなデータの見せ方を考え、表現する人が生まれてほしい。私たちは淡々とデータを出すだけという状態が理想だ」と語った。広報室は今後、OPENMETIの反応を見ながら第2弾のコンテンツも構想段階という。
“特に20~30代に興味を持ってもらえるコンテンツを目指した”