現在、ゴンベ渓流国立公園のタンガニーカ湖の近くで(Goodall氏が鉛筆とノートを持って最初に観察を行った場所)、村人たちは「Android」タブレットでGoogleのMaps EngineとEarth Engineを組み合わせて利用し、チンパンジーの頭数に影響する生息地を観察している。コミュニティーは1人の森林観察者を選出し、その観察者が森を巡回して写真を撮影し、データを記録する。そして、そのデータを「Open Data Kit」でオフラインに保存する。インターネット接続とエネルギーの確保が一番の課題だ。
JGIは同ソフトウェアを利用して、アフリカのチンパンジー生息範囲内の森林の2.4%がこの12年間で破壊されたことを発見した。2012年、JGIはアフリカのチンパンジーとその生息地の85%を保護するという30カ年目標を設定している。
樹木、チンパンジー、土地と人間の関係は、歴史や地理、文化といった背景によって大きく変わる。広い範囲を網羅した画像やデータがあれば、非常に効果的だ。
「(データを)衛星画像に重ねると、背景が見えてくる。これを一通り説明すると、共通の言語と透明性が生まれる。この自然保護プロセスにおいて極めて重要なことだ」(Pintea氏)
学校教育に応用
このテクノロジは森林破壊の追跡において大きな成果を上げてきた。しかし、Goodall氏(ひいてはJGIのチームも)は、未来の世代が地球上のこれらの森林とすべての生き物、その生息地の価値を正しく認識できるようにしたいと考えている。
環境教育プロジェクト担当マネージャーのStephanie Keller氏は次のように述べた。「われわれは、それを米国の子どもたちに役立てるにはどうすればいいのかと考えた。米国では、子どもたちがこれらの現実世界のスキルを異なるレベルで使っている」
米国では、子どもたちにコミュニティーへの気づきとその弾力性を教え、環境を正しく管理させる取り組みにデジタルマッピングが使用されようとしている。
かつてのGoodall氏がそうだったように、子どもたちが最初にやるのは、自分が住んでいる地域を歩き回って詳細に観察することだ。自分の周りの環境を紙に書き留める。学校の近くにはどんな動物が住んでいるのか。建物の近くにはどんな植物が生えているのか。どこで食べ物や本を手に入れているのか。水源はどこにあるのか。
次の質問は、何が欠けているのか、コミュニティーにおける最大の問題は何か、というものだ。
コロラド州デンバーの2年生のクラスが心配していたのはコヨーテだった。地域の公園には、コヨーテの攻撃から身を守る方法を示す標識が掲げられていたが、特に子どもや英語を母国語としない人、字が読めない人にとっては難しい内容だった。このクラスは、単に野外を歩き回っているときに、このことに気づいた。
Roots & ShootsのアソシエイトバイスプレジデントであるErin Viera氏は次のように述べている。「自分の手で何かをすることには、カタルシスを起こさせる何かがある。最初にペンと紙を使ってマッピングを行うと、見逃してしまいがちなつながりを見つけられる。そのマップをデジタル版に変換すると、さらに新たなつながりを発見できる。それらは互いに補完し合う関係にある」

提供:JGI