「自分の周りの世界に全く影響を及ぼさずに過ごす日などない。自分の行動で何かが変わる。どんな変化を生み出したいのかを決めなければならない」(Jane Goodall博士)
1960年、著名な霊長類学者のJane Goodall氏はチンパンジーの世界を調査するため、ノートと鉛筆、双眼鏡を手にタンザニアのゴンベ渓流国立公園を訪れた。最初の数週間は思うように事が運ばない。チンパンジーたちはGoodall氏が近寄るたびに逃げ出したからだ。しかし、同氏はやがてチンパンジーの信頼を勝ち取り、彼らの行動から非常に多くのことを学んだ。その間Goodall氏は、観察内容をノートに記録し続けていた。
2014年4月に80歳になったGoodall氏は著名な自然保護活動家であり、科学者、活動家、人道主義者でもある。同氏は現在、急激に変化するテクノロジの世界と、それが自然保護の取り組みに及ぼす影響を心から歓迎している。Jane Goodall Institute(JGI)は先ごろ、既にアフリカの森林破壊防止で成果を上げているデジタルマッピングテクノロジを基に構築された大規模公開オンライン講座(Massive Open Online Course:MOOC)の開設を発表した。JGIは、人類がすべての生き物に貢献できるように支援している国際的な非営利団体だ。
JGIはデジタルマッピングを使って、米国の子どもたちが自分のコミュニティーにおけるJane Goodall氏になれるようにする取り組みも行っている。子どもにマッピングツールを与えて、自分たちの生態系に何が欠けているのかを発見させ、それを変えるように促すという活動だ。
森林破壊をマッピング
特にゴンベでは、チンパンジーの行動に関するデータは大量にあったが、生息地や進行中の森林破壊に関するデータは非常に少なかった。JGIの自然保護科学担当バイスプレジデントであるLilian Pintea氏によると、1972年~1999年の間に、ゴンベ渓流国立公園周辺の森林の80%が破壊されたという。
そこでJGIは、アフリカの村人たちに村の周辺の生態系をマッピングするよう依頼した。その対象は、森林、農地、コミュニティーの居住地、資源のある場所、子どもたちが日よけに利用する樹木などだ。
「それがきっかけでJane Goodall Instituteのコミュニティーアプローチが誕生した。同時にわれわれは、コミュニティーが自然保護と科学的なデータ収集プロセスの両方にもっと関与できる方法を開発しなければならないということを認識した。人々はこうして知識を得るチャンスを持てることを誇りに思い、その力を得た」(Pintea氏)
Googleとの提携により、このプロセスはさらに前進した。現在、チームは「Google Maps Engine」と「Google Earth Engine」を使って森林を観察している。ゴンベ渓流国立公園の地形は起伏が多いため、以前は最も破壊が進んでいる場所を特定するのが困難だった。しかし、これらの高解像度の衛星画像を確認したことで、自然保護の目標がはっきりと定まった。
提供:JGI